研究課題/領域番号 |
17K04185
|
研究機関 | 北九州市立大学 |
研究代表者 |
入江 恵子 北九州市立大学, 文学部, 准教授 (10636690)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | インターセックス / 性分化疾患 |
研究実績の概要 |
本年度は、本来計画していた海外における調査計画から大幅に変更し、国内にて遂行できる研究として、分析枠組みの検討と文献資料に基づく言説分析を行った。また、研究の成果発表として国内外で学会発表を行った。その他、本研究において新たにフィールドとして設定したオーストリアの当事者らと共同研究の計画に着手した。 まず、分析枠組みの検討としては、昨年度までに作成していた当事者の身体の総合作用の概念図を基に、当事者の個人レベルで経験される身体の医療化について理論的構築をはかった。これにより、先述した文献資料の分析において、自らが経験する身体的違和感という経験を基軸に捉え、理解や不信感といった葛藤を認識しながら専門家支配された知と向き合っていることを明らかにした。 また、昨年度に明らかにした「インターセックス」を指す呼称のゆらぎの問題について、「ジェンダー」「セックス」という言葉そのものと、意味づけの差により、「インターセックス」という呼称に対する態度に違いが表れていることがあるが、本年度は、特に日本における状況について、医療系の学会などの記述を分析した。これらをまとめたものを、PSA(Pacific Sociological Association)92nd Annual Conferenceにて、”Nomenclature Conflict: Intersex Community in Japan”として成果発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
予定していた海外での研究活動が軒並みキャンセルになったり、渡航できない状況が続いたため。 学会発表は予定していたうちの1つを除き、すべてキャンセルになり、それに伴って予定していた聞き取り調査も遂行することができなかった。また、渡航することができなくなり、当事者グループの集まりやイベントに参加させていただく予定も立たず、参与観察と聞き取り調査が行えなくなり、現地での調査が頓挫してしまった。全世界での感染状況から、各当事者団体はオンラインでのイベント開催を模索していたようだが、当初の計画のもの全てが開催されることはなかった。また時差や他の業務との兼ね合いから結果として4回のイベントに参加するにとどまった。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度は渡航することができなくなり、またそれ以前に参与観察や聞き取り調査など、実際に会ってやりとりすることが不可能となってしまった。しかしながら、参加予定だったイベントのいくつかはオンラインで開催され、かろうじて海外の調査協力者とのつながりを保つことができた。しかしながら、今後は海外でのみワクチン接種が進み、オンラインでのイベントは対面のものへと戻される可能性が高い。そうなった場合、イベントの内容などを把握しづらくなることが考えられる。以前よりもましてSkypeやZoomを利用し、調査協力者との繋がりを保ちながら、本来計画していたものとは異なる聞き取り調査の方法を確立して調査研究に臨む。
|
次年度使用額が生じた理由 |
予定していた海外での調査、研究発表が行えなくなり、来年以降に計画を遂行するために渡航費用を大幅に繰り越すことになった。
|