世代間関係における親密性の計量的把握を目指し、世代間アンビバレンスの視角から、世代間関係の「質」に関する理論的・方法論的な検討を行うことを目的とし、1年目には国内外の世代間関係、特に中期親子関係の計量的な研究を中心に先行研究のサーベイを行った。2年目には、1年目の成果をふまえた調査票を作成し、小規模な実査を行った。調査会社のモニターを用いて性別と年齢層による割り当て30~70歳までの男女で500名に、郵送による質問紙調査をおこない374名の回答があった。調査内容は、基本属性、定位家族での経験、現在の家族生活、家族意識、主観的well-being項目(CES-D、家族ストレーン)、援助、介護の経験、サポートネットワーク、家計の状態、子どもの頃の父母との関係、世代間関係に関する社会規範意識など多岐にわたる。また世代間関係の親密性の測定についても、現在の1時点の回答だけでなく、同項目を回顧で尋ねたり、長期的な推移を尋ねたりして、親子関係の全容を把握できる工夫をおこなった。 3年目にはデータの分析を行い、類似項目を尋ねている大規模データとの比較などを行いながら、測定の妥当性や、質問内容の信頼性について精査を行った。先行研究では満足度や良好度といったポジティブな方向からの質問によって、世代間関係の親密性を評価する方法が多かったが、本研究により、ストレーンや不和の経験といったネガティブな方向からの質問によっても親密性を評価することの意義を確認できた。今後はアンビバレンスの視角から世代間関係を捉える理論的検討を深めるとともに、大規模サンプルに対して今回精査した調査項目の調査を行いたいと考えている。
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