研究実績の概要 |
本研究では地域住民コホート調査53,000人超の参加者から配偶者ペアを特定し、配偶者のがん既往がパートナーに及ぼす健康影響(特に精神・心理面及び社会的影響)を同定することである。本研究では以下の仮説を検証する。① 心理的苦痛・抑うつ症状・不眠について、配偶者のがん既往ありの者で配偶者のがん既往なしの者よりもリスクが高い。② 無職について、配偶者のがん既往ありの者に比し、配偶者のがん既往なしの者よりもリスクが高い。③ ①②の関連は、東日本大震災の被害程度が大きい、他の同居者がいない者、低い教育歴の者でリスクが増大するという仮説を検証する。 さらに、④ 配偶者のがん既往がパートナーに及ぼす健康影響を同定するだけではなく、今後の効果的な介入研究を考え、心理的ストレスに脆弱なパートナーに対する介入方法を探索することである。最終年度は、④の文献検索を実施した。 申請者が着目した方法は既存の心理的技法(認知行動療法、リラクセーション、自律訓練法、漸進的筋弛緩法等)のみならず、臨床現場での精神科のコンサルテーションによる早期発見についても範囲を広げて検索した。 結果として、世界的に見ても心理的技法(認知行動療法、リラクセーション、自律訓練法、漸進的筋弛緩法等)の一定の効果が示されている研究は報告されているが、大規模災害と配偶者のがん既往など極度なストレス状況下で効果が示されるかどうかは分からなかった。また、臨床現場での精神科のコンサルテーションによる早期発見による心理的アウトカムが早期に改善するかどうかについても不明であった。 今回、大規模災害及び配偶者のがん既往という極度なストレス状況における介入戦略は未だ明らかにされておらず、既存の心理的技法により応用できるかを介入研究によって明らかにするべきである。
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