研究課題/領域番号 |
17K04197
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中津 真美 東京大学, バリアフリー支援室, 特任助教 (90759995)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | CODA / 聴覚障害者 / 障害のある親 / 親子関係 / 障害者支援 / 障害者家族 |
研究実績の概要 |
本研究では、聴覚障害者を親にもつ健聴の子ども(Children of Deaf Adults;CODA)が、親を支援・擁護する認識を抱くことにより生じる特有の親子関係を類型化し、類型別の親子支援モデルを提示することを目的とする。 今年度は、昨年度に検討した「CODAの親子関係3類型」を用い、各親子類型と諸要因との関連を解析した。具体的には、13歳以上のCODAと、聴覚障害のある親の親子ペア57組を、「回避による自律傾向型」「親愛傾向型」「役割逆転型」に分類し(各類型ともn=19)、①基本的属性(性別、年代、同胞数、出生順位、親の聴覚障害)、②通訳状況(通訳開始年齢、通訳頻度)、③会話状況(会話法、親子の会話成立レベル)、④心理的状況の要因を用いて比較検討した。 ①親子類型と基本的属性との検討では、役割逆転型は両親とも聴覚障害の場合が多く(p<.01)、回避による自律傾向型は父親または母親のみ聴覚障害の場合が多かった(p<.05)。②通訳状況では、通訳頻度において、役割逆転型がより高値を示し(p<.05)、通訳開始年齢でも、役割逆転型がより低年齢であった(p<.05)。従って、役割逆転型のCODAは、より早期から頻繁に親の通訳を担う傾向であることが窺えた。③一方、会話状況では、親子の会話法や会話成立レベルの要因と、親子類型との関連は認められなかった。④心理的状況は、CODA側では、回避による自律傾向型(p<.05)と役割逆転型(p<.01)のCODAの方が、親の障害に困惑し、さらに周囲から孤立する傾向であった。また、親愛傾向型のCODAの方が、より親の障害を受け入れていた(p<.01)。親側では、回避による自律傾向型と親愛傾向型の親の方が、子育ての困惑・不安を有していた(p<.01)。また、役割逆転型の親の方が、障害に対する引け目を感じていた(p<.01)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究における「CODA特有の親子関係を類型化し、各親子類型と諸要因との関連を解析して特徴を明らかにした上で、類型別の親子支援モデルを提示する」目的のうち、平成30年度は、親子類型と諸要因との関連を解析して、各類型の特徴を明らかにすることができた。 親子支援モデルの内容を検討し、実施検証を行うまでには至らなかったが、今年度の目的である「類型別の親子支援モデルを提示する」ことは研究スキーム上、十分可能であると考えられ、上記の評価を行った。
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今後の研究の推進方策 |
今後は予定通り、CODAの親子類型について、類型別の親子支援モデルを検討する。上記のような知見が得られれば、これまで我が国をはじめ国外でも皆無であった、CODAと聴覚障害のある親に対する支援方略が明らかになり、CODA親子の健やかな関係性形成の一助となるものと思われる。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度末より実施予定であった、親子支援モデルの実施検証までには至らなかったため、諸経費が翌年度に繰り越された。また、業務の都合上、予定していた学会発表3件が2件に留まったため、旅費の支出が抑えられた。
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