刑務所における社会復帰教育での動物との触れ合いが、受刑者のストレスマネジメントやコミュニケーション能力の向上に与える効果を検証するため、2種の実践研究を行なうことが、本研究の目的であった。最終年度も、新型コロナウイルスの流行の影響により、当初計画した実践は行えなかった。1つ目の施設では、コロナ対策を施したイヌ介在介入プログラムを計画し直し、感染状況を見ながら実践を行ったが、途中で感染拡大のため実践を中止したことや、実践終了が次年度に持ち越されたことが響き、結果の分析は次年度以降に行う予定である。別の施設では、小型草食動物による介在介入プログラムを準備していたが、コロナ対策の解除ができなかったため、実施には至らなかった。代わりに、コロナ禍でも可能な研究として、当初の目的に関連した、様々な動物種による介在介入の効果や導入についての総説論文を執筆し公刊した。また、動物介在介入の教材開発やプログラムの開発、改良の基礎的知見となりうる動物絵本の描写の定量的分析を行い、動物観や人と動物の関係について論文を公刊した。 本研究は、新型コロナウイルスの流行により、世界的に動物介在介入の実践が止まってしまった時期にあたり、当初の計画通りに進まなかったが、前半部分の実践では、対象者の気分やコミュニケーションの改善が認められた。後半では、草食動物の社会的認知能力に関する実験、様々な動物種による介在介入プログラムの吟味、動物観、動物利用に関する倫理観、対人援助行動、動物に関する対人コミュニケーション、人と動物の相互交渉、小型草食動物による介在介入プログラムの開発などの研究を進め、厳しい情勢下でも遜色ない研究成果をあげることができた。今後も動物介在介入の実践を予定しており、これらの関連する研究成果が活かせるようにしたい。
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