今年度は、研究成果のとりまとめと公開を積極的にすすめつつ、残された調査課題に取り組むための現地調査を実施した。現地調査は2019年12月にウッタルプラデーシュ州Varanasiで実施した。調査のねらいは、本研究で縦断的聞き取り調査をすすめてきた若者たちの最終的な状況確認であった。調査で得られた知見は大きく二つある。まずは職業教育系の学校へのアクセスは、学力や経済力の面で高いハードルがあること、修了後の就職機会はかなり貧しいことである。次いで、こうした状況におかれた若者たちの様々な行動とその結果も確認できた。彼らは、非正規職やフリーランスの仕事、あるいは家業の手伝いなどをしながら、職業教育系学校入学の再チャレンジ、大学院進学、公務員試験受験、ITや外国語の資格取得といった「良い仕事」獲得のための努力を続けている。しかし、多くの場合、その努力は報われていない。今年度中に実施した研究成果の公開は3回の口頭報告である。また、先述の現地調査中に、本研究の協力機関(Triumphant Institute of Management)の代表者と面談し、3年間の調査成果等を報告した。
なお、3年の研究期間全体の総括と成果は以下である。研究期間中には、現在のインドの職業教育に関する政策動向のサーベイをすすめながら、Varanasiにおける現地調査を実施した。その上で、これらの作業で得た知見をもとに、職業教育や専門職教育は学卒者の就職難の緩和に寄与しているのかどうかを検討した。その結果、インドの政策は社会政策の世界的潮流にリンクしていること、職業教育や専門職教育は学卒者の就職難に対する「万能薬」ではないことが明らかになった
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