海外調査の可能性を鑑み、研究期間を延長したが、本年度もCOVID-19の感染影響のため海外渡航を断念した。しかしその分、国内(福岡市)の事例分析と海外の二次資料調査に時間を割くことができた。例えば、福岡市の里親リクルートの実践について、広報戦略およびデザインの観点から分析を行い、先行研究で明らかになっていない視座を見出すことができた。具体的には、2004年から継続している官民連携のネットワーク組織「ファミリーシップふくおか」におけるリクルート実践について、2013年から現在に至る実践を第2期と位置付け、その広報およびデザインの工夫を明らかにした。また、オピオイド・クライシスの影響で、代替養育を必要とする子どもが急増する米国において取り組まれてきた里親リクルートの実態調査に取り組んだ。その結果、里親候補者の募集から養育を開始するまでの一連の活動という意味での狭義の里親リクルートに対して、登録後の里親の維持(リテンション)を含めて包括的に里親リクルートを位置付ける必要性を見出すことができ、日本国内における今後の里親リクルートにおいて、有用な視座を見出すことができた。また、最終年度となる本年度は、今までの研究成果を複数の媒体およびフォーラム等で発表することができた。公益財団法人全国里親会が発行している季刊誌「里親だより」においては、昨年度に引き続き、全2回の連載記事を執筆することができた。また、「日本子ども虐待防止学会第28回学術集会ふくおか大会」および「第31回日本外来小児科学会年次集会」においては、広報デザインの観点から講演を行った。さらに、民間団体である「赤ちゃん成育ネットワーク」および「ファミリーシップふくおか(福岡市)」主催のフォーラムでは、広報の観点からみた福岡市における里親リクルートの特徴について、講演を行った。現在、一連の成果をまとめ、論文を執筆している。
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