本研究では、2015年度から実施されている生活困窮者自立支援制度の効果を検証評価する観点で、個別ケースの支援プロセス・効果の分析とともに、生活困窮者の社会的包摂に求められる政策枠組みと支援実践のあり方についての検討を行った。 具体的な研究成果として、第1に、生活困窮者支援で着目される就労支援のプロセスと効果について、独自指標の開発プロジェクトの成果をふまえて、数値による状態変化の可視化を試みた。 第2に、就労のみでなく日常生活や社会参加を含めるねらいから、居住支援の実態調査や政策検討を重点的に行った。特に、居住支援のニーズ把握として、ホームレス・不安定居住の独自調査の分析や、コロナ禍のもとでの特別対策を交えた効果検証、今後に求められる政策枠組みと支援実践の提起を行った。 第3に、生活困窮者支援の政策・実践モデルの構築を試みる目的で、これまで提唱してきた伴走型支援の理念・手法をふまえて就労支援や居住支援のあり方の検討を行った。 以上の研究成果について、著書や専門誌掲載の論文を発表したほか、国際学会や国際会議を通して国際的な発信も積極的に行った。あわせて、生活困窮者自立支援法の改正を控えて設けられた国の会議においても、特に居住支援について課題提起を行うなど、研究成果の社会的なフィードバックにも努めた。 さらに、本研究の成果とその発信を通して、国内外で調査研究のネットワークがさらに拡充し、次年度以降の科研費等での研究課題・計画の設定につながった。
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