研究課題/領域番号 |
17K04208
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研究機関 | 青森県立保健大学 |
研究代表者 |
坂下 智恵 青森県立保健大学, 健康科学部, 准教授 (70404829)
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研究分担者 |
大山 博史 青森県立保健大学, 健康科学部, 教授 (10340481)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 自殺予防 / 地域 / 多層的予防介入 |
研究実績の概要 |
今年度は青森県内の高齢者自殺死亡率の高い市町村のうち、自殺リスクであるうつ病を把握するスクリーニングを用いて自殺予防事業を実施した5市町の過程評価を行った。これらの自治体では、うつ病スクリーニング(一次スクリーニング及び精査スクリーニング)と保健・医療・福祉の連携による陽性者のケアマネジメント及び一般住民に対する啓発・健康教育が実施されていた。 4市町ではうつ病スクリーニングにSDS(Zung’s Self-rating Depression Scale)を用いており、1町では介護予防事業におけ生活機能評価(介護予防健診)の基本チェックリストを用いていた。各自治体における対象者数は436~897人に分布しており、参加率はいずれも50%以上を得ていた。基本チェックリストにはうつを評価する項目が含まれているが、従来うつ病エピソード有症者の把握効率が低いことが指摘されているため、今回、睡眠障害(早朝覚醒)を尋ねる項目を加えてスクリーニングを実施した。SDSの一次スクリーニング陽性率は10.9~15.3%に分布していたが、基本チェックリストでは16.1%を得た。精査スクリーニングの結果、把握されたうつ病エピソード有病率はSDSでは0.7~2.3%とばらつきが見られていたが、基本チェックリストは2.2%であった。陽性反応的中度は、SDSでは6.8~15%に分布していたが、基本チェックリストでは13.3%とSDSと同等のうつ病エピソード把握効率を有していた。 これまで基本チェックリストは受診率やスクリーニング精度の低さ、陽性者へのフォロー体制の不十分さに加え、自治体により対象者選定方法が異なるなど、自殺対策として活用するにはいくつかの課題があったが、今回の結果から、スクリーニング項目の改良と保健・医療・福祉の連携により、介護予防事業を自殺予防対策として活用できる可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に沿って、概ね当初の予定通り研究を実施した。研究対象となった自治体では、壮年層に対してうつ病スクリーニングとフォローアップおよび把握された生活問題に対するケースワークを行うことにより自殺対策を推進している。これらの活動の実績を把握するとともに、自殺死亡率に対する影響の分析に用いる基礎データを集積中である。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、うつ病予防戦略による中高年者自殺予防事業を実施している青森県内の自治体の過程評価を行い、最終年度では、本プログラムの実績と市町村別自殺死亡率変動との関連を検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
プログラムに関わる費用の一部を実施した自治体が負担したことによる。次年度以降の自治体負担額は縮小される可能性がある。次年度使用額はプログラムの実施に必要な費用に充てる。
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