研究実績の概要 |
青森県内のA自治体で行われている自殺予防事業のうち、うつ病スクリーニングのプロセス評価を行った。A自治体における令和5年度のうつ病スクリーニング対象者は30歳~70歳までの5歳区切りにあたる住民3,345名であり、自治体の2回の呼び掛けに対し受診した者は1,722名(51.5%)に上った。受診者は郵送法により抑うつ症状の有無を尋ねる項目に希死念慮を問う項目を加えた自記式の問診票に答えた後、1次陽性者には保健師または精神保健福祉士が詳細について電話面談を行った。1次陽性となった者には高ストレス状態にあるうつ病ハイリスク者が多く含まれており、その背景に介護や育児・家事、職場環境や人間関係、生活苦など深刻な生活・労働問題を抱えていた。検診受診者のうち、抑うつ症状有症者あるいはその疑いと判定された者が43名(2.5%)であり、これまでのうつ病スクリーニングの実績から見ても把握率は同等の水準であった。43名中、フォローアップが必要と判断された者は10名(0.6%)であり、このうち受診勧奨を行った者は3名(0.2%)、残り7名(0.4%)は背景にある生活問題に対して福祉サービス等の紹介を行っていた。この他、既に治療中である者が13名、うつ病等の既往がある者が13名含まれており、再発時の症状や受診を要する症状などについて電話面談時に簡易な心理教育が行われていた。電話面談では、症状の有無の他に背景の生活問題に対するサービス利用の必要性を評価するなど、1度の面談でケースワークが展開されおり、特に精神保健福祉士が対応したケースで顕著であった。なお、受診者のうち、全過程を通じ途中で辞退、拒否、連絡が取れなかった者は約5%であった。
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