研究課題/領域番号 |
17K04210
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研究機関 | 岩手県立大学 |
研究代表者 |
吉田 仁美 岩手県立大学, 社会福祉学部, 准教授 (20566385)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 障害統計 / ワシントン・グループ / シティ・グループ / SDGs / 国際比較 / 経済統計 |
研究実績の概要 |
平成29年度は、第一に、主に内外の文献収集につとめた。その際には統計情報も収集し、現在、文献を整理し分析を行っている。また、統計情報に関しては国連統計委員会などの情報がウェブ上に掲出されており、常に動向をチェックする必要があったので、インターネット上の情報も参考にした。第二に、障害統計やデータに関して重要だと思われる関連文書、国際的文書、データを収集して分析・考察を行った。中でも、障害統計の整備に向けて重要だと思われる「ワシントン・グループ」の活動に着目して研究を進めた。同時に国連統計委員会を支える「シティ・グループ」への理解を深めることも意識的に行った。第三に、障害測定に関してワシントン・グループが開発した「短い質問セット」が世界各国でどのように使用されているか(国勢調査、全国調査、障害モジュール、事前テスト等)文献資料やインターネットからの情報をもとに調べた。このことと関連して、障害測定の枠組みの基礎となるWHOのICF(国際生活機能分類)の形式について検討を行った。第四に、これらの研究に関して、自主的な研究会や英語文献学習会を開催するなどして継続的に研究を続けられるように工夫をした。本研究は外国語文献に依拠することが多く、専門用語の翻訳等は注意深く行う必要があった。その場合は適宜、専門家の指導・助言を受けながら進めた。第五に、日本の高等教育の障害者のニーズを把握するために先進的な取り組みをしている大学数校にヒアリングを実施することができた。 なお、今年度の成果の一部は岩手県立大学社会福祉学部紀要に投稿し、掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第一に、文献、統計の資料収集の一部を行っており、ジェンダー視点を積極的に取り入れることを意識して資料にアクセスしている。現在、分析継続中だが、この点は計画に沿って進んでいるといえる。しかし、もっと多くの米国の文献や国際的な関連統計資料にアクセスする必要性は感じている。それから統計情報に関しては日米に限らず、世界各国のデータを使用して分析する必要性を感じている。 以上の点から交付申請書に照らして、「おおむね順調に進展している」という評価になる。
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今後の研究の推進方策 |
障害統計の整備の重要性は教育・雇用の問題を含めて内外でますます高まりつつある。国連レベルでは2006年に障害者権利条約が採択され、2014年に日本政府は同条約に批准した。日本国内では障害者権利条約の批准に伴い、国内法の整備に向けて2009年に障がい者制度改革推進本部が内閣府に設置された。そこで2011年に改正障害者基本法が成立し、続いて2013年に障害者差別解消法が成立された(障害者差別解消法は2016年4月から施行された)。この法律によって、国公立大学は障害学生に対して合理的配慮を提供することが義務付けられた(現時点では私立大学は努力義務)。これらの法制度は障害者権利条約第24条(教育)を反映させたもので、今後、この政策を具体化するために障害者の実態を把握するための統計整備や実態調査に基づきガイドラインの作成・整備を積極的に進めていくことが求められる。 本研究を進めるにあたり、国際的には障害者統計に関しては一定の取組があって試験段階から実践普及へ及びつつあるが、障害者ジェンダー統計は未着手に近いことが明らかになった。日本でも状況は国際レベルに追いついていないであろう。次年度以降も日本と米国の障害者問題全般の動向を踏まえたうえで、障害者統計についても、ワシントングループやESCAPの動向を調べ、日本の実情を把握し、改善をめざす研究を強めていきたいと考えている。中でも、本研究のテーマに沿って、高等教育における障害者に関する国際的データを整備し、分析していきたいと考えている。とりわけ米国の教育統計分析や国際的な障害者データから学び日本の統計整備には何が不足していてどのような改善が必要なのかを提案できる研究をしていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究経費で購入予定であった統計関連資料に関しては書籍のみならずインターネット上で公開が進んでいることもあり、このことに関する経費が一定程度軽減された。それから平成29年度に実施予定であったアメリカの現地へのヒアリング調査であるが、調整が難しく行えなかったこともあり、急遽、国内でのヒアリング調査を実施することにした。以上が次年度使用額が生じた理由である。
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