研究課題/領域番号 |
17K04221
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
中山 徹 大阪市立大学, 都市研究プラザ, 都市研究プラザ特別研究員 (40237467)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 貧困 / ホームレス / 生活困窮者 / 生活困窮者自立支援法 / 一時生活支援事業 / 地域居住支援事業 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、ホームレス問題が 変容する中で、ホームレス自立支援法に基づくが生活困窮者自立支援制度の任意事業である「一時生活支援事業」に統合化されたことによるホームレス支援における政策的・実践的効果の検討を行うとともに、この事業の政策的・実践的課題を提示することである。 現在「ホームレス自立支援法」と「生活困窮者自立支援法」が併存している状態にあり、研究課題の対象事業は、「一時生活支援事業」とその拡充策である「地域居住支援事業」の実態と課題を把握することによって、研究目的にアプローチできる。2021年度は、改正「生活困窮者自立支援法」施行を踏まえ、ホームレスを含む「不安定居住層」に対する「居住支援」という視点から捉え直した。 2021年度は、第1に、全国の福祉事務設置自治体に対する一時生活支援事業、コロナ禍のもとでの住まい等に関する相談内容、相談時での居住場所や自治体の対応施策についての郵送調査とこれまで採り上げてこなかった多様な担い手とその仕組み等に関する調査研究に参画した。一時生活支援事業の特徴的な支援の担い手やその仕組み(救護施設や公営住宅の活用等)の詳細な実態等を把握することができた。第2に、居住支援法人や地方都市での「車上生活者」問題などの認識を新たにすることができた。第3に、一時時生活支援事業の対象者は、ホームレスだけでなく居住に関する困難を抱えている人を対象としており、地方都市におけるその存在が明らかになった。第4に、一時生活支援事業や地域居住支援事業を「制度横断的な居住支援」と位置づけることの重要性を改めて確認できた。第5に、2002年以来継続している尼崎市のホームレス概数調査、生活実態調査を実施することにより、同市におけるホームレスの変容を把握することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概ね順調にしている理由は以下のとおりである。今年度は、本研究目的遂行のため、全国の福祉事務所設置自治体に対する「一時生活支援事業」実施状況調査、特徴的な自治体への聞き取り調査を踏まえた居住支援の在り方の検討を目的とした令和3年度厚労省社会福祉推進事業「一時生活支援事業等における総合的な居住支援の在り方に関する調査研究事業」に主任研究員として参画した。その結果、郵送アンケートでは、コロナ禍のもとで自立相談支援事業の相談窓口に「住まい」の相談が増加しており、「不安定居住層」からの相談も地方都市への広がりがみられ居住支援のニーズがある事などが分かった。第2に、これまで採り上げてこなかった一時生活支援事業の多様な担い手とその仕組みを明らかにするため9自治体へ現地調査とリモートによる調査を実施した。1、広域連携による地域居住支援事業実施(熊本県)、2. 県と複数の市による情報共有(福岡県)、3. 救護施設の活用(長野県長野市)、4. 公営住宅の活用(宮城県大崎市)、5. 無料低額宿泊所の活用(埼玉県川越市)、6. 生活困窮者自立支援と生活保護の連携(さいたま市)や愛知県半田市、京都府八幡市、8. 静岡県富士市、9. 未実施だが、居住支援法人を活用している宮城県登米市である。その結果、第1に、救護施設については、居宅生活訓練事業、第2に、公営住宅の活用については、令和3年の国土交通省の通知による自治体側での手続きの簡便化などが大きな役割を果たしていることが分かり、多くの自治体で活用可能であることが明らかになった。第3に、「地域居住支援事業」については、県主導と公営住宅、民間支援団体との連携により、今後の展開の可能性があることが明確となった。そして、一時生活支援事業を「分野横断的な総合的居住支援」として位置づけることが重要であることが分かった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の政策的枠組みは、2018年の生活困窮者自立支援法の改正により、一時生活支援事業の拡充策として「地域居住支援事業」が創設されたが、2022年3月現在20自治体と少ない現状にある。21年度2自治体に聞き取り調査を行ない地方都市におけるホームレスだけでなく、住居を失う可能性が高い者などに対して地域の居住のセーフティネットとして機能していることが明らかになった。一時生活支援事業の役割の1つが明確になったため、第1に、2022年度は、新たな居住資源として登場している「ケア付き賃貸住宅」の実態の把握を行う予定である。近年無低宿泊所の再編の中で登場した「日常生活支援住居施設」(2020年10月~)との関係を踏まえて実施する予定である。そして、これまでの政策的枠組の変容と聞き取り調査結果の整理を踏まえ、本研究の最終年度の研究を纏める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
【理由】 1、コロナ禍の中で、西宮市、尼崎市については、通勤圏域にある自治体であるため、3ヶ月に1回、「無低宿泊所」の地域生活移行事業評価委員会への参加するとともに、ホームレスや生活保護の動向について、役所、NPOとの情報共有を図っているが、経費は掛からなかった。 2、一時生活支援事業実施自治体における多様な担い手とその仕組みについての自治体へアンケート調査と自治体への聞き取り調査(9自治体)は、他の研究費を用いた。特に、自治体への聞き取り調査は、コロナ禍のためリモートで実施をすることが多く、実施調査の場合の経費は、他の研究費を使用したためである。 【使用計画】 1 本研究テーマ遂行のため、できるだけ、聞き取り調査に使用していきたい。2 最終年度であるため、収集資料や統計資料を整理し、報告書としてまとめる為に使用する。
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