研究実績の概要 |
本研究の目的は、生活困窮者自立支援制度の任意事業である「一時生活支援事業」に統合化されたことによるホームレス支援における政策的・実践的効果の検討を行うとともに、この事業の政策的・実践的課題を提示することである。 「ホームレス自立支援法」と「生活困窮者自立支援法」が併存している状態にある。研究対象事業は、2022年度現在任意事業である「一時生活支援事業」とその拡充策である「地域居住支援事業」になっている。全国的にホームレス数が減少しているとは言え、ホームレス数は、3,065人であり、また、コロナ禍の中で様々な居住不安層の増加が指摘されている中で、前者の実施率は、令和3年度で全国35%、後者については、27自治体である。ホームレス等「不安定居住層」に対する「居住支援」という視点から捉え直した。 そこで、これまでの一時生活支援事業等の調査を踏まえ、2022年度は、新たな試みである民間でのサブリースによる「支援付き」居住確保の取り組みについて、現地調査(全国13パートナー団体)を実施し、その現状と支援の課題について検討した。この事業は、2022年度は、3年目になる。生活困窮者等に個室アパートを支援付で提供するという事業で、大家のサブリース家賃と入居者からの住宅扶助基準・家賃収入との差額による「ケア」コストを賄う事業である。入居者は「自立度」が高い人々ではなく、一時生活支援事業等や他分野の居住資源から漏出しているホームレス等の割合が高く、家具什器・寝具等が用意された民間アパートというメリットがある一方で、支援については様々な工夫が必要であることが分かった。運営方法については、「無低」または「日住施設」化する団体が多く、収益化による支援体制構築という事業継続性の課題も分かった。ホームレス等居住不安定層に対する新たな居住確保の試みという有意義な事業であるということが確認された。
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