研究実績の概要 |
本研究では、戦前の民間助成財団が助成先を決定する際の選考基準について、原田積善会の所有する「寄付申込記入帳」と「寄付審査録」の助成を行う際の選考に関連する史料を「寄付審査録」の記録が残っている1931(昭和6)年から1941(昭和16)年について用い、実証的に検証を行った。そして、今まで一次史料へのアクセスの難しさから取り組まれてこなかった民間助成財団の助成決定に至る審査の内容等について質的に検証することで、助成の実態をさらに詳細に明らかにすることを目的として検証を進めた。 寄付審査録の分析を行った1931(昭和6)年から1941(昭和16)年には、2,587の施設名や団体名等があった。この間に実際に助成が行われた数は2,324件であり、寄付申込帳に記載のある場合の助成率は9割になる。記載のない1割については、原田積善会の特徴である個人救済(259件)がほぼあたるため、実際には寄付申込帳に記載のある施設や団体については助成が行われていた。質的分析では、助成審査の助成決定のポイントとして審査記録の内容を踏まえ10にカテゴリー化(①紹介者の有無、②奨励助成や補助金を受けているか、③他の助成財団からの支援、④事業の内容、⑤助成の内容、⑥社会的背景、⑦団体関係者、⑧助成を以前に受けた事があるか、⑨資金難の程度、⑩その他等)を行い分析を進めた。 また、民間助成財団の助成の意義と役割について総体的に明らかにするための助成の受け手側の団体から助成の意義について検証する研究については、財政に関する資料を踏まえた研究をもとに検証可能な団体の資料収集を継続的に行い、事例による検証を進めた。検証可能な資料が少ないこともありまだ事例は少ないが、民間助成財団からの助成が受け手側の施設や団体にとっても意義のある助成であるケースが多い事がわかってきた。
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