研究課題
本研究は、里親委託率の自治体間格差に着目し、格差の要因や近年の政策転換が格差に及ぼす影響について検証した。社会的養護の自治体間格差に関する研究は、里親委託率を被説明変数とし、里親委託率を規定する様々な説明変数を定量的・定性的に検証してきたが、里親委託の内実には着目せず、また、取り組みなどの政策的要因に着目し、構造的要因を検証してこなかった。そこで、本研究では自治体の政策転換前後の社会的養護の実態を、(a)なぜ家庭養護が多い/少ないのか、家庭養護のなかでは、里親が多いか/FHが多いか、里親委託のなかではどのような里親が多いのか、という問いに分解して検証し、また、(b)近年の家庭養護への政策転換によってどのような課題が生じているか、という問いを検証した。調査の結果、政策転換前から里親委託率が高い自治体では、施設の収容力(施設数、定員数)の小ささが里親委託の大きなプッシュ要因となっていたが、それに加えて施設や里親の地理的配置(施設・里親が近くにある・いるか否か)も里親委託の大きなプッシュ要因となっていた。また、実親の同意も「遠くの施設より近くの里親」という点で同意が得られていた。政策転換後に里親委託率を伸ばしている自治体では、親族里親が増えている自治体、FHが増えている自治体など、里親委託の内実にはバリエーションがあった。一方、もともと里親委託率が低く、政策転換後も里親委託率があまり伸びていない自治体は、親族里親やFHなどは活用されていなかった。さらに、取り組みによる結果ではなく、構造的な要因によって里親委託率が高かった自治体は、里親支援体制の構築に困難を抱えていた。
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