研究課題/領域番号 |
17K04228
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研究機関 | 高知県立大学 |
研究代表者 |
杉原 俊二 高知県立大学, 社会福祉学部, 教授 (50259644)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 児童虐待 / 自分史分析 / 4テーマ分析法 / 虐待予防 / 保護者支援法 / 改良4T法 / 家庭児童相談室 / 児童家庭支援センター |
研究実績の概要 |
筆者は自分史分析の児童虐待予防について、地域の相談機関でも使用できるように改良4T法を考案した。前年は、児童家庭支援センター(児家セン)と家庭児童相談室(家児室)での改良4T法の使用について報告した。より良い方法を探すため、4T法に関わった支援者から具体的な意見を聴取し、今後の指標にすることを目的とした。 対象者は、支援者で本研究への参加を承諾した人。調査方法としては半構造化面接、リサーチクエスチョンとして、担当した事例のうち1~3事例を思い浮かべてもらい、①その事例がどう変化したか、②4T法の良かった点は何か、③4T法で改良する点は何か、を尋ねた。分析方法はKJ法。 結果として面接ができたのは8人、年齢29~61歳、経験年数5年~40年、所属は精神科診療所4人、家児室と児家センが各2人。電話かZoomでのインタビューで、1人2回ずつ実施。面接ごとに逐語録を作成し全部で508枚の元ラベルを得た。最終的に8つのまとまりに集約。 考察として、肯定的な意見が多かった。精神科クリニックでは「4T法の対象者選択の困難」という複数意見があった。これは「うまくいく対象者とそうではない対象者がおり、その選択に注意が必要」ということであった。つまり、選ばれた対象者だからこそ上手にできたが、その数は多くなかった。4T法が決して万能でない。さらに、4T法の有用性を認めた上で「世代間連鎖」を意識し、対象者の被虐待体験を「できるだけ自由に話せる場を作る」ことが重要であることが示唆された。すでに、精神科領域の「オープンダイアログ」や子育て支援の「ネウボラ」といったフィンランドの実践が知られている。わが国でも利用者自身の被虐待体験を「自由に語る」ことと、それを「静かに聞く」こと、さらに「意見を交換する」といったことについて、抵抗が少ないことも分かってきている。さらなる検討が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
コロナ禍により、予定していたインタビューが実施できなかった。移動に制限がかかり、関西地方に依存していたインタビューができない時期が長く続いた。高知県内でできた調査は1件だけであったが、それも中断・延期を余儀なくされた。制限が緩和されても実際に、現任校のある高知から関西へ移動中に、予定していたクライエントのコロナ感染が明らかになり、現地にたどり着いても何もできないときがあった。 今年度の研究は、そのようなときに支援者の一人が気を利かせて、マネジメントしてくれたものであった(つまり予定になかったもの)。しかし、いろいろと考えさせられる結果となった。つまり、4T法の効果と限界であり、限界については「オープンダイアログ」などの研究成果を活用して、新たな展開も見えてきた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、これまでの研究の総まとめと、これからを考えなければならない。つまり、追加とその追跡調査、全体のまとめとこれからの課題である。これは次の科研費の課題として考えている。 これまでの研究成果を学科発表だけでなく論文化する必要があり、研究誌や紀要などへの投稿も考えている。あともう一歩のところであり、もう1年の猶予を頂けたのは、砲塔にありがたかった。
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次年度使用額が生じた理由 |
インタビューや事前の打ち合わせに行く旅費が使えませんでした。次年度にはそれも使う予定です。
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