研究課題/領域番号 |
17K04229
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研究機関 | 北星学園大学 |
研究代表者 |
田中 耕一郎 北星学園大学, 社会福祉学部, 教授 (00295940)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 重度知的障害者 / ケアの制度化 / 正義 / 第二波フェミニズム |
研究実績の概要 |
<重度知的障害者>およびその家族のケアの現状と、「ケアの分配」に係る規範論との架橋に向かうために必要な整地作業として、<重度知的障害者>が生きるうえにおいて不可欠なケアに含意される規範の内実、およびこのケアの平等な分配、すなわち「ケアの制度化」を志向する際に生起するであろう幾つかの論点について原理的な考察を加えた論考を『北星論集(社会福祉学部)』(北星学園大学)に投稿した(田中耕一郎(2020)「『ケアの制度化』をめぐって : <重度知的障害者>に対する『ケアの分配』に向かうための序論」『北星論集』第57号,pp.73-89(北星学園大学)。この小論の中で、特に第二波フェミニズムにおける先行研究の知見を参照にしつつ、ケアの規範的含意とその制度化をめぐる論点を整理し、「ケアの制度化」の意味と意義を「ケアと正義の接合」という観点から検討した。加えて、<重度知的障害者>の視座から提起されうる「ケアの制度化」をめぐる議論が、その起点と展開において異なる道程を辿るものの、フェミニズムが逢着した地平と重なりを見せることを確認した。 今後、この小論による「整地」の上に、<障害者>と<女性>、<支援者>や<行政>等から発せられた「ケアの分配」をめぐる声-それは、訴訟、交渉、呪詛、怒り、絶望、理念、スローガン、運動等において発せられた声であろう-に内在する規範的論点について、福祉の規範理論の引照点となったロールズの正義論や、そのロールズの基本財の分配構想を批判的に乗り越えようとしてきたセンやヌスバウムの規範理論がどのような解を導出しうるのかを検討し、さらに、これらの解が<重度知的障害者>の「ケアの分配」においてどのような意義と限界点を呈するのかを検証していきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2016年度から昨年度(2019年度)まで、勤務校において学部長·研究科長職に就いており(2016·2017年度は法人常任理事も兼任)、大学および学部·研究科の運営管理に忙殺されたため。
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今後の研究の推進方策 |
今年度(2020年度)は、これまでの研究成果を基盤に、障害児者への「ケアの分配」をめぐる係争のアクターたちから発せられた規範的言説を拾い集め、これらの言説分析を通して、障害児者への「ケアの分配」>に係る規範的論点の抽出・概念化を試みたい。 この作業において抽出したいのは、これら「ケア分配」をめぐる係争の個別具体的な論点に留まらず、その係争の背後にあり、そのアクターたちの主張を根拠づけ方向づけている諸規範であり、その論点である。例えば、訴訟事例や行政交渉事例においては憲法および福祉各法における法規範がそこに含まれるのであるが、本研究では、アクターたちがどのような文脈においてこれら法規範に依拠し、そこで何を<善 / 正>として措定しているのかというところまで掘り下げていきたい。
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