研究課題/領域番号 |
17K04229
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研究機関 | 北星学園大学 |
研究代表者 |
田中 耕一郎 北星学園大学, 社会福祉学部, 教授 (00295940)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ケア分配 / 規範的言説 / 文法 |
研究実績の概要 |
「ケア分配」における規範的言説の分析に取り組んでいる。この作業において抽出し概念化しているのは、「ケア分配」をめぐる議論の個別具体的な論点に留まらず、その議論の背後にあり、そのアクターたちの主張を根拠づけ方向づけている諸規範であり、その論点である。 例えば、訴訟事例や行政交渉事例においては憲法および福祉各法における法規範がそこに含まれるのであるが、この作業では、アクターたちがどのような文脈においてこれら法規範に依拠し、そこで何を<善 / 正>として措定しているのかというところまで掘り下げ、そこにどのような<文法>の交錯を見出すことができるのかを検討している。 具体的素材は、障害当事者やケアの担い手である家族や支援者たちの切迫した怒りや焦燥、時にはケアの快や喜びの感情とともに吐露される言葉が記録された手記やドキュメント、また、「ケア分配」をめぐる対立、すなわち、その主張と論点がより先鋭的に提示される訴訟事例や行政交渉において表出された規範的言説である。 この作業は「ケア分配」が語られる際に、その語りを成り立たせるために用いられる諸要素と、そこに意識的/無意識的に、或いは表示的/暗示的に込められる規範を包摂する<文法>に着目しつつ、そこで表出された重層的な言説から、「ケア分配」をめぐる規範的論点を抽出するとともに、その論点を今後、「ケア分配」をめぐる規範モデル構築の素材として活用し得るよう概念化する作業である。この<文法>という概念を導入することにより、「ケア分配」をめぐる規範の議論と制度化の議論を関連づけることができると同時に、上記二つのポジショナリティを横断しつつ相互の論点を俯瞰でき、さらには、「ケア分配」の議論におけるアクターたちが「文法を体得・実践するという主体的な側面」(森川2015)をも把捉することができるのではないかと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2016年度から2019年度まで学部長職に就いていたために、本研究課題に取り組む時間を確保することが困難であった。また、学部長任期が終了した2020年度は、コロナ禍による社会福祉実習の代替プログラムの企画·運営などに多くの時間を割かざるを得ず、本研究課題の作業を進めることが十分にできなかったためである。 ただ、2020年12月には、札幌市及びその近郊の大学教員有志による研究会で、本研究課題の途中経過を報告することができた(『ケア分配』をめぐる規範的言説の検討:『ケア分配』の《文法》に焦点を当てて)。
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今後の研究の推進方策 |
今年度(2021年度)後期にサバティカルを取得予定であり、このサバティカルの期間を有効に活用して、本研究課題に係る科研費補助の最終年となる今年度は、現在、取り組んでいる「『ケア分配』をめぐる規範的言説の検討」を論文にまとめ、社会福祉学会もしくは勤務校紀要に投稿する予定にしている。また、併せて、「ケア分配」に係る複数の規範モデルを検討し、さまざまなケア実践の事例との照合を通して、その適用可能性を実証したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍によって、予定していた全国学会大会(社会福祉学会、障害学会)がZoom開催となったため、旅費を支出しなかったため。
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