研究課題/領域番号 |
17K04231
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研究機関 | 北星学園大学 |
研究代表者 |
杉岡 直人 北星学園大学, 社会福祉学部, 教授 (10113573)
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研究分担者 |
大原 昌明 北星学園大学, 経済学部, 教授 (20203911)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 公民連携 / 有償ボランティア / 地域包括ケア / ソーシャルビジネス |
研究実績の概要 |
平成30年度は、前年度に引き続き、訪問事例調査を中心に実施した。NPO法人わかち愛もせうし(北海道妹背牛町)では、住民主体の地域食堂の立ち上げやサロン活動について、秋田県あきた未来創造部での集落の取り組み支援や住民が運営するお互いさまスーパー(羽後町)、山形県酒田市での社会福祉協議会が推進する住民の助け合い活動支援と事例、酒田市内のNPO法人あらたでの訪問調査、滋賀県東近江市のあいとうふくしモールにて障害者の就労(カフェ)、高齢者の生活支援(デイサービス)、地域の主婦の就労(農家レストラン)の場として地域の資源を活用する循環型の取り組みの実践、近江八幡市おやじ連での聞き取り調査、京都府精華町のみんなの元気塾による空き家活用の住民主体の取り組み調査を実施した。 都市部での調査は、東京都文京区にあるNPO法人風のやすみばの取り組み、東京ホームタウン大学(於:津田塾大学)での関係団体の実践報告、栃木県宇都宮市での全国宅老所・グループホーム研究交流フォーラムにて、制度によらない取り組み事例の情報収集、岐阜県大垣市、関市、池田町における有償ボランティア活動の総合事業推進における行政課題について聞き取り調査を行った。 これらの事例調査を通じ、①地域の課題を解決する非営利団体によるソーシャルビジネスとしての取り組みが登場してきていること、②課題解決においてボランティアの有償化が採用されてきているが、その位置づけは行政として試行錯誤の段階であることが把握された。 研究成果については、「NPO法人Tによる宅老所事業の経営分析」(北星学園大学学園大学経済学部北星論集第58巻第1号:2018年9月発刊)と「社会福祉法人による共生社会のまちづくり(1)、(2)」(北海道地域福祉研究第22巻:2019年8月掲載決定)をまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度の研究計画は、(1)自治体アンケート調査の分析(統計的分析と自由記述に関するカテゴリー分析を行う)(2)事例調査の実施(都市地域)(3)ワークショップの開催(自治体および有償ボランティア団体関係者の参加によるワークショップ方式で課題を抽出する)(4)日本社会福祉学会報告(9月)、北星学園大学学園大学経済学部北星論集投稿(2019年3月)である。 進捗状況については、(1)アンケート調査と(3)ワークショップの開催については、平成30年度から介護予防・日常生活支援総合事業に基づく取り組みが全国一律でスタートされ、現地調査において行政の対応がさほど進んでいないこと、および全国的な取り組みの動向が集約された調査結果が2019年3月に公表されたことから、調査内容の重複を避けるため、さらに平成31年度に持ち越すことが適当であると判断した。(2)事例調査と(4)研究成果の報告については、おおむね予定通りに実施することができた。(2)については、行政、社会福祉協議会をはじめ、NPO法人等の地域住民主体の取り組み事例に関する調査を実施することができた。(3)については、訪問調査を通じて協力を依頼しており、最終年度である平成31年度に実施予定として関係者の予定を打診している。(4)については、「宅老所の経営分析」「宅老所の歴史的展開と今」「宅老所と地域共生社会の共生概念の問題」(2018年度北海道地域福祉学会全道研究大会)および福祉社会学会において、「宅老所の展開からみる地域共生社会概念の検討」として報告を行い、「NPO法人Tによる宅老所事業の経営分析」(北星学園大学学園大学経済学部北星論集第58巻第1号:2018年9月発刊)と「社会福祉法人による共生社会のまちづくり(1)、(2)」(北海道地域福祉研究第22巻:2019年8月発刊予定)として論文を投稿(掲載決定)した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究推進方策としては、(1)住民による地域福祉活動に対する公民連携の方法と内容に関して、住民主体の支え合いの活動スタートにおける市町村の役割について、地域包括支援センターや社会福祉協議会との連携による活動のバックアップ、マネジメント役割に着目し、(2)有償ボランティア団体及び生活支援サービスの類型化とこれらの団体が行う家事援助や居場所づくり・サロン活動などの生活支援サービスの実施体制について、厚生労働省の総合事業に関連する事例等から分類・類型化を試みて、その具体的な課題を考察する。 (3)都市型と過疎地域型の公民連携の支え合いモデルの提示をおこなうにあたり、過疎地域では、サービスの空白地帯が多く、互助的活動の担い手も高齢化していることで活動の継続可能性を事例調査の結果を踏まえて具体的な対策を検討する。 その上で、地域特性を反映した課題解決を公民連携のモデルに対応させて検討する。平成31年度は、①アンケート調査(平成31年6~7月に実施予定)により、行政が行う市民活動への支援の内容、生活支援サービスの類型化、②補足的な事例調査(平成31年6月、10月実施予定)を通じて明らかにし、③自治体関係者等が参加するワークショップ(平成31年11月実施予定)により、地域特性と都市農村比較をふまえた実践的な課題を浮き彫りにし、有償ボランティア活動の推進に関わる主体形成と運営方法についての公民連携モデルを構築する。 研究成果の公表については、学会報告(日本社会福祉学会、北海道地域福祉学会)と論文投稿 (北星学園大学社会福祉学部北星論集および北海道地域福祉研究)を予定しており、原稿作成のための資料整理および現地調査関係者に聞き取り調査内容の確認手続きを進めている。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年度に実施予定であった自治体対象のアンケート調査が、事例調査の過程で十分な体制がとれていないところが多く、課題が継続的に解決される必要があったところから、最終年度の段階でポイントを絞り込んでアンケートを実施することが有効と判断したため関係支出が一部持ち越しとなったものである。
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