研究課題/領域番号 |
17K04238
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研究機関 | 東京福祉大学 |
研究代表者 |
藤島 薫 東京福祉大学, 社会福祉学部, 准教授 (90530121)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 参加型評価 / 若者早期支援 / 解決志向アプローチ / 協働 / 対話 |
研究実績の概要 |
研究目的である「参加型評価アプローチによる若者早期支援プログラム」を開発するために、研究の初年度である本年は、基礎資料および先行研究の収集と先行事例の把握と調査を行った。 まず、基礎資料では参加型評価アプローチに関する資料をプログラム評価と参加型アクションリサーチ分野まで広げて収集し、その理論と背景となる哲学および具体的な運用手法について把握することができた。また、先行事例の把握については、アメリカで実施されている「Youth Participatory Evaluation」に関する文献およびネットで情報をかなり詳細に収集することができた。日本における若者支援プログラムについては主に解決志向アプローチによる実践に焦点を絞り、子どもと思春期への支援プログラム、学校における取組みの事例を集めた。また、佐賀星生学園で行っている不登校や発達の課題などを抱えている生徒を対象にした解決志向アプローチによる教育支援について、実施調査を行いその効果を確かめることができた。この調査によって、若者自身が自己の課題を改善するためのストレングス及びリソースを持っているということを、教員や支援者が信じることの重要性を認識することができた。そのような支援者の態度は、若者が自分のストレングスに気づき自信を高めることに役立ち、その結果、若者に肯定的な変化をもたらすことができるのである。また、フィンランドブリーフセラピー協会プログラムの子育てのワークショップにファシリティターとして関わり、参加者(子どもや若者に対する支援を行っている)の意見を収集することができた。 初年度ではあるが、本研究の理論と実践の統合について日本環境福祉学会において口頭発表を行い、若者を主体とした参加型評価を取り入れる支援プログラムによって、若者自身のストレングスを見つけエンパワーメントを促進することが期待できることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初、予定していた先行研究および先行事例の収集は概ね順調である。しかし、まだ、若者支援プログラムの先行研究については十分といえないこと、実践事例の調査が2か所しか実施できなかったこと、また、支援者へのインタビューも2か所のみであったことから、やや遅れている状況である。 理由は、若者参加型をどのように定義するのかを絞り込めず、広く若者支援プログラムにはどのようなものがあるのかの実施状況を把握することに時間を要してしまい、その中から本研究に有益となるプログラムを抽出することができなかった。実地調査で予定していたWOWWOプルグラムを行っている教育機関への訪問日程は平成29年度中にはうまく調整できず、新年度での再調整となった。関係者への半構造化面接やフォーカス・グループ・インタビューは実践事例の調査時に2か所実施することができたが、若者と家族が参加してのインタビューが実現できず、こちらも次年度での実施となっている。
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今後の研究の推進方策 |
研究2年目となる平成30年度は、まず、平成29年度で取り残された文献資料の収集と分析を行う。また、日本での先行事例をできるだけ早期に調査し、同時に関係者へのインタビューを実施しまとめる。本研究が参考としているアメリカのACT for Youth Centerで実施している参加型評価の具体的評価システムについて詳細を知るために現地調査を実施する。できる限り、評価手法のノウハウだけでなく、実際にどのように若者が評価プロセスに参加し、その結果、どのような効果があるのかを視察できるよう訪問を調整する。 また、現在、我が国で実施されている若者支援には行政が主体となっているものから民間主体のものと様々であるが、本研究における若者参加型のプログラムの定義に基づく事例に対してどのような評価システムを採用しているのか、アンケート調査を行う。アンケートは全数調査を予定しており、その後の、介入調査へと連動できるよう依頼をする。31年度で予定している若者ワーキンググループを結成し、若者支援プログラムへの参加型評価アプローチの枠組みと評価項目を検討し作成する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、記録用ビデオカメラおよび録音機が予算よりも安価なものを購入することができたことと、集計用パソコンおよび統計ソフトはまだ研究データを入力するに至っていないことから、平成29年度では購入する必要がなかったことによる。 今後の使用計画は、平成30年度の後半からアンケート調査を行うので、その分析用に統計ソフトを購入することと、入力および分析のための謝金にあてる予定である。
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