研究課題/領域番号 |
17K04238
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研究機関 | 東京福祉大学 |
研究代表者 |
藤島 薫 東京福祉大学, 社会福祉学部, 准教授 (90530121)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 若者支援 / エンパワメント / 参加型評価 / オーナーシップ / 引きこもり当事者 |
研究実績の概要 |
今年度は、課題を持つ若者自身による当事者活動を中心に実態調査を行った。これまで、引きこもりや不登校の子どもを持つ親の会が情報交換や居場所づくりなどを行うことが多かったが、多様性を認めようとする社会の動きに伴い課題を持った若者が新たな文化を発信しお互いに支えあおうとする活動が盛んになってきた。新型コロナ感染が収まらず、予定していた若者の当事者による参加型評価の介入調査は実現できなかったが、それぞれの当事者の活動現場での観察やイベント参加によって、多くの知見を得ることができた。 また、事例研究として、大学卒業後、就職をしたが数日で自己退職をしたのち引きこもってしまった20代後半の若者へのSNSを活用した30回以上に及ぶ聴き取りでは、引きこもりに至った背景として、中高時代のいじめを起因とする自己肯定感の低さ、若者自身による家族介護(ヤングケアラー)、就職先とのマッチングの問題、コミュニケーションの課題、など多様な要因があることがわかり、社会参加をしなければならないという脅迫的な意識が更に、その一歩を踏み出すことの恐怖を深めているという悪循環に陥っていることがわかった。 今年度の後半では、引きこもりの子どもを持つ親の会の代表へのインタビュー調査と、会員による参加型評価を行った。研究代表がファシリテーターとなりロジックモデルを作成することで、会が行ってきた活動の意味、そして、将来への波及効果を見通すことで、現在の課題を会員が自発的に考えることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
今年度の予定では、若者支援団体(民間、行政)に対して、若者支援状況および効果についての評価方法等についてアンケート調査を実施する予定であった。全国の地域若者サポートステーション、引きこもり支援センター、教育サポートや自立支援団体を想定していたが、アンケート内容に見直しが生じたことと、若者自身による当事者活動団体へのアンケート調査の必要性が生じたことから、支援者側と当事者側の実態が調査によって関連づけられる調査項目を検討したことが遅れの大きな理由となっている。 その結果、データ収集ができないため、今年度の目標であった、若者支援状況と評価の実施及び活用状況についての分析まで至ることができなかった。 また、課題を抱えた若者当事者へのインタビューも実施する計画になっており、同様の課題を持ったフォーカスグループをいくつか作り、それぞれのニーズを把握することを目的としていたが、やはり、新型コロナ感染が継続されていたことから、実施することができなかった。個別の事例に対しては、インタビュー調査を実施してきたが、スノーボール的調査対象者を抽出するため、事例研究としては意味のあるものであるが、エビデンスを得るには十分とは言えず、更に、系統だった項目におけるフォーカスグループインタビューを実施する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
今後、早急に実施する研究の推進方策としては、まず、①若者支援団体(民間・行政)の支援状況と評価の実施及び活用状況と若者の当事者団体の活動状況とニーズの関連性を分析することが可能となるアンケート調査項目の完成を目指し、アンケートを実施する。 ②次に、得られたデータを分析し、若者支援団体がどのような関わりや支援を行っているのか、どのような評価手法によってどのような結果を得られているのか、どのようなロジックモデルになっているのか、若者の社会参加が困難になった要因はなにか、若者が考えるニーズとは何か、何をもって若者支援の効果を測定するのか、などについて分析を行う。 ③そして、若者のフォーカスグループをつくり、フォーカスグループインタビューを実施する。グループインタビューガイドは半構造化とし、インタビュー調査を補完する内容とする。また、若者の当事者団体による参加型評価を実施しロジックモデルを作成し、長期目標および波及効果(遠位目標)のために、どのようなことをしたらいいのか、どのような点について評価を行ったらいいのかを自分たちで考え抽出してもらう。 ④研究最終年となることから、以上の研究結果をまとめ、所属学会への発表および論文投稿を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度、使用額が生じた理由は、今年度実施要諦であった、全国の若者支援団体へのアンケート調査と若者自身による当事者団体へのアンケート調査を実施できなかったことによって、人件費(資料整理、アンケート調査にかかる一連の作業、データ入力および分析作業)、調査謝礼、アンケート調査票作成費(印刷費、紙代、レイアウト費用など)、アンケート調査票の郵送費および通信費が発生しなかったことによる。 また、当事者へのインタビュー調査はほとんどがSNSを活用したことと、フォーカスグループインタビューが実施できなかったため、調査に必要となる旅費交通費や人件費(調査補助、データ整理など)の発生もなかったことも理由としてあげられる。 次年度の使用計画は次の通りである。①若者支援団体および若者当事者団体へのアンケート調査に必要となる費用(印刷費、レイアウト費、用紙代、プリンターインク代、データ入力および分析作業の人件費、通信費など)、②若者支援団体および若者フォーカルグループインタビューに必要となる費用(会場費、会議費、旅費交通費、謝金、事務用品、など)、③その他、必要に応じて統計ソフトバージョンアップ、モニターなど。
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