最終年度である本年は研究機関に9月から復帰することができたので、限られた期間であったが可能な研究活動を行った。 まず、業務停止となる前に実施したひきこもり家族会との参加型ワークショップで抽出されたロジックモデルの要素(インプット、アクティビティ、アウトプット、インパクト)をまとめ、家族会が掲げている理念とインパクトの関係を示すものを作成し、再度、ワークショップ形式で参加型評価を実施した。ロジックモデルの解説を行い、小さなグループに分かれ対話(ダイアローグ)をベースとした振り返りを行った。自分たちが行ってきた活動の意味づけと理念を実現するための活動の骨子を見出すことができた。当初の計画では、その後、引きこもり当事者のワークショップを実施する予定であったが研究期間間では実現することができなかった。 また、本研究のテーマは参加型評価を若者支援にどのように活用すべきかというものある。従来型の評価と違う点は評価者と評価を受ける者との平場の対話をベースとするところにあることから、民主的な対話プロセスをどのように醸成していくのかが重要な鍵となる。対話(ダイアローグ)を子ども・若者・家族・市民に活用しているフィンランドの先駆的実践から知見を得るために、対話的アプローチの先駆者であるトム・アンキル氏、スーパーバイザーのヨルマ・アホネン氏らと意見交換を行った。また、フィンランドの関連施設(クライシスセンター、行政、教育機関等)への視察を行い、対話プロセスの活用についての情報を得ることができた。 研究期間全体を通して多くの先行研究(参加型評価の若者支援について、および、そのベースとなる対話プロセスの哲学的背景と先行事例等について)を収集分析することができた。家族への参加型評価は振り返りまで行うことができたので、今後は、課題をもった若者に対して対話をベースとした参加型評価の効果を検討していく。
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