今年度は、昨年度実施した国内のインタビュー調査(外国人住民、外国につながりをもつ子どもの学習支援関係者、地方自治体の職員、社会福祉協議会、民生児童委員、民間支援団体)を踏まえ、論考「外国人住民の福祉的課題とソーシャルワーク専門職の介入の必要性-地域支援とライフステージを視野にいれた定住支援に向けて-」としてまとめた。調査を通して、とくに外国人の子どもたちの課題が浮き彫りになり、①地域支援のネットワーク化と参加の場づくり、②ライフステージにそった段階的な適応・定住支援について提言した。 また、国内調査とともに、2017~2018年度に実施した海外調査(オーストラリア:シドニー2回、イギリス:ロンドン、スウェーデン:ウプサラ)で得た結果を整理し、フィールド調査からの知見を「移民・難民の統合プロセスにおけるソーシャルワークに関する研究-フィールド調査報告書」としてまとめた。イギリス・オーストラリアでは、すでに移民・難民が混在する多文化社会であるが、イギリスは主流のソーシャルワーク教育・実践の中で、国内外人区別なく支援が提供され、一方、オーストラリアは、文化的コンピテンスや定住支援が重視されていた。スウェーデンは、近年、大量難民を受入れたことにより、地方自治体で定住・統合支援体制の整備が進行中であるようだが、ソーシャルワーク教育・実践において積極的な対応はみられなかった。報告書では、今後のソーシャルワークの実践モデル試案のために、①移民・難民の自立に向けて、②受入れ社会の共生社会のための基盤作り、の二点の観点から、検討すべきファクターを提示した。
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