研究実績の概要 |
本研究は、医療相談場面における援助者の態度や表情と援助成果の関連性を検証し、表情のもたらす効果・影響を明らかにすることを目的とした。実際の相談援助場面での援助者の表情を記録・分析し、援助成果との関連性を検討することを研究の核としているため、(1)相談援助場面のビデオ記録収録、援助成果と援助業務の評価調査および分析、(2)援助者および相談者の表情の同期性の分析、(3)(2)までの結果から援助者の表情を統制した模擬面談の実施、(4)模擬面談の結果による援助者の表情と援助成果および援助業務の評価との関連性の検証の計4ステップを実施した。 最終年度となる本年度は、上記(3)および(4)の2ステップを実施し、援助者の表情を統制した実験により、援助者の表情が、援助成果および援助業務の評価に影響を及ぼしたのかを検証した。昨年度までの研究で、面談中の相談者および援助者の表情に連動性があることが確認されている。また、基本6表情(Ekman,1972)を元に客観的な評定を行った結果、表出された表情は真顔が最も多く、笑顔と悲しみ顔も比較的多くみられていた。そこで援助者の表情を、真顔、笑顔、悲しみ顔、相談者の表情に合わせる(mirroring facial expression)の4つのパターンに統制して模擬面談を行った。その結果、相談者の表情に合わせたパターンでは援助者に対する信頼感と安心感、医療サービスに対する安心感が最も高くなった。また、相談内容についても、相談者の表情に合わせたパターンにおいては満足度や内容の理解度が最も高まったが、悲しみ顔においては理解度が比較的高いものの満足度が低くなる傾向がみられた。今年度の検証により、援助者が表出する表情の違いにより、相談者の援助者に対する評価や援助成果、相談に対する評価に効果・影響があることが示唆された。
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