研究課題/領域番号 |
17K04248
|
研究機関 | 大正大学 |
研究代表者 |
坂本 智代枝 大正大学, 人間学部, 教授 (00317645)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 精神障害者 / アドボカシー / ピアアドボカシー / ピアサポート |
研究実績の概要 |
2000年以降欧米において、ピアアドボカシーの具体的な実践として当事者運営サービスが精神保健福祉システムに組み込まれて、当事者が政策決定に参画することが当然のこととなっている。わが国における地域精神保健福祉活動におけるピアサポーターの活動が拡がりをみせる中で、ピアサポーターが行うアドボカシー機能(坂本:2008)にみられるように「体験的知識」を活用したアドボカシーの実践の蓄積がある。そこで、本研究の目的は①先駆的な北米の精神障害当事者が行うアドボカシーの機能と役割及び支援プロセスについて明らかすること、②日本における精神障害当事者が行うアドボカシーの機能と役割及び支援プロセスを比較検証して日本型の研修プログラムの試案を開発すること、③ 日本型の研修プログラムの試案を実施し効果を検証し、実効性のある研修プログラムとテキスト及びマニュアルの開発をすることである。 今年度は先行研究の整理と、ニューヨーク市において、唯一の当事者運営サービスの基準を保ち先駆的に実践しているニューヨーク市のピアアドボカシーの実践団体バルティック・ストリート「Baltic Street :Advocacy -Employment -Housing」の活動プログラムの調査とその中でも代表的なプログラムのブルックリン・ピアアドボカシーセンター(Brooklyn Peer Advocacy Center)とブリッジャー・サービス(Bridger Services)のディレクターとスタッフにインタビュー調査を実施し、ピアアドボカシーの機能と役割の具体的な構成要素と支援プロセスが明らかになった。すべてのサービスに「ピアアドボカシー」の理念が基本にあり、直接に住居サービス等の地域生活支援サービスを行うことや、公的なサービス等にも同行するなど「伴走型」の支援を行うことが特徴であることが明らかになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度予定していた調査等の研究計画は終了し先行研究との比較検討を通して、詳細の分析を行っている最中である。さらに、特筆すべきことは、ボストンにおいて開催されたピアアドボカシーに関する「Alternatives Conference 2017」に参加するこができたことと、ニューヨーク市保健局のDepartment of Health & Mental Hygiene のリハビリテーションプログラムの担当者にインタビュー調査ができたことで、ニューヨーク市及びニューヨーク州の地域精神保健福祉施策の動向が明確になった。
|
今後の研究の推進方策 |
継続して先行研究を行うことと、日本の地域精神保健福祉領域においてピアサポーターとして実践している精神障害当事者に協力を得てフォーカス・グループ・インタビュー調査を通して、日本のピアサポートの実践と比較検証することで、日本版のピアアドボカシー研修プログラムの試案を開発する。 平成29年度に実施した研究内容を踏まえて、日本の精神障害当事者のピアサポートの実践者に適したピアアドボカシーの機能と役割を整理してピアアドボカシー研修プログラム試案を作成し、日本の精神障害当事者のピアサポートの実践者へのフォーカス・グループ・インタビュー調査を実施してオープン・コーディングを行い分析する。 さらに、その結果を踏まえ先行研究及び調査の分析結果の質を担保するために、研究協力者数名と国内のピアサポーターの研修を主催している団体に参加の協力を得て研究会を年2回実施する。
|