研究課題/領域番号 |
17K04249
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
宮本 悟 中央大学, 経済学部, 教授 (70352846)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | フランス / 社会保障 / 社会手当 / ラロック / 家族給付 / 子育て支援 |
研究実績の概要 |
本年度は、フランス社会保障の父=ピエール・ラロックの社会保障理論を子育て支援策の観点から再整理することを中心に、研究を進めた。まずは、わが国におけるラロック社会保障理論の先行研究を分析することで、これまでに蓄積されてきた同理論研究の到達点を確認した。その上で、ラロック自身の著作を検討・分析し、子育て支援策の観点から社会保障の中でも家族給付を中心にラロック理論の再整理を試みた。 1.わが国におけるラロック社会保障理論の先行研究としては、工藤恒夫氏の論考が注目される。そこでは、社会保障の政策目的(社会的不平等の是正・緩和)や究極目標(「無階級社会」の実現)など、政策論的分析が緻密に展開されている。その一方で、家族給付については、社会保障を構成する4要素の1つに位置づけられる「収入保障」との関連で言及されるにとどまっている。 2.ラロック自身は、家族給付を、医療保険・年金保険・労災保険などとともに社会保障を構成する一制度と位置づけ、児童手当を社会保障の前提条件の1つと捉えたべヴァリッジ報告とは異なる見地に立つ。また、家族の扶養負担を補償する概念は、19世紀末から20世紀にかけて賃金問題との関連で顕在化したものとの認識を示し、賃金と家族給付(とりわけ家族手当)との関係を重視する。さらに、家族の扶養負担を補償する実践的な対応は、家族賃金の保障への不安や、扶養家族数によって生じる実質的生活水準格差への不公平感など、労働者側の「異なる懸念」を背景にして歴史的に積み重ねられてきたとの認識を示している。 これまでに進めてきた研究の成果については、論文としてとりまとめ、『経済学論纂』(中央大学)にて公表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、ピエール・ラロックの社会保障理論を子育て支援策の観点から再整理することを中心課題としていた。わが国における先行研究の分析と、ラロック自身が遺した数多くの著作のうち主要な文献についての検討・分析を一定程度進められたため、論文として取りまとめて公表する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
3年計画の2年目にあたる平成30年度は、ラロック社会保障理論が実際に創設された社会保障制度に与えた影響を中心に、考察を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は文献研究を順調に進められたものの、予定していた国内出張が叶わなかったため、旅費や資料・情報提供に伴う謝金などについて未使用部分が残された。 平成30年度は、研究の効率化を図るために、フランス子育て支援策・社会保障理論に関する専門的知識や資料の閲覧・提供などを国内の専門家に依頼する予定である。
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