研究課題/領域番号 |
17K04255
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研究機関 | 日本女子大学 |
研究代表者 |
林 浩康 日本女子大学, 人間社会学部, 教授 (70254571)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 里親家庭 / 出自を知る権利 / 記録の管理 |
研究実績の概要 |
大きく分けて2つのことに着手した。まず従来から行ってきた里親家庭で養育された経験のある方への里親家庭での体験について、インタビュー調査を2名の方に行った。一人目の方は、里親家庭において同じような境遇にある他の4人のきょうだいと共に育てられた。血縁にある弟以外のきょうだいの存在も大きな支えであると同時に、頻繁にきょうだいで実親への思いなどを語り合っていることをお聞きした。気兼ねなくそうした話題をきょうだいで話せること、またそうした話ができる雰囲気や環境づくりには里親さんが大きく寄与されていた。二人目の方は孤独な状況下で2つの里親家庭で過酷な体験をされた。自己否定のスパイラル、家族や家庭への形式的固執、過酷な体験がそうした認知形成に影響を与えた。幼いながらも自身の境遇を理解し、辛さを抱えながらも誰とも共有してもらえず、懸命に生きる術を自分なりに身に付け生きてこられた。一方で人間の潜在的可能性も再確認できた。現在の里親家庭での暮らしは、将来の夢や勉学の意欲を強化させ、着実に夢の実現に向け歩んでおられる。これまでのインタビュー内容と共に継続的に分析を進めている。 2つ目に、児童相談所や民間養子縁組あっせん機関における記録の適切な取得・管理及びアクセス支援に関して検討し、提言を整理した。すなわち「出自を知る権利」の国内法における明文化、記録の取得、管理、アクセス支援に関連するガイドラインの策定、子どもの出自情報の取得・管理・アクセス支援を統括する国レベルの中央機関の設置、中央機関における記録の一元的管理、記録の管理に関する専門職の育成・配置である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
多様な研究協力者との連携により、研究成果を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
不妊治療を経て里親や養親となる方々の喪失感と子どもの養育への影響を、当事者へのインタビュー等を通して、明らかにし、社会的支援のありかたについて検討する。また、子どもの出自を知る権利保障に向け、その記録管理や当事者への開示支援についてさらに研究を進め、それらに関するガイドラインを作成したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外渡航を計画していたが、渡航が叶わず研究費を消化しきれなかった。今年度はその使用額を海外渡航に使用する予定である。
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