児童相談所及び民間あっせん機関における、相談支援から縁組成立後支援までの各段階における取り組み及び実態を把握するとともに、令和元年 6 月の法改正を経た現在の制度活用及び支援体制の整備にかかる実態や主な課題点等を収集することを目的とする調査研究に携わった。公民機関と共に記録の保管、記録へのアクセス、開示のあり方に課題があることが明らかとなった。すわなち出自を知る権利の保障体制が十分に確立していないこと、縁組が必要な子どもたちに縁組の提供を推進するための委託体制における課題、縁組後の支援における課題等が明らかとなった。 また、里親家庭や養子縁組家庭での生活体験のある成人者2名にそれぞれインタビューを行い、家庭での生活実態や社会的課題について明らかにした。里親家庭経験者の方は、児童養護施設入所中から施設生活では考える力が身に付かず、将来の人生に不利だと思い、里親家庭を望まれた。施設の子どもたちは不満を感じていても、どう行動を起こせばいいかわからず生活していたとインタビューイーは振り返られた。里親との交流が活発な施設で生活されていたこともあり、インタビューイーにとって里親は身近な存在であった。入所中から子どもたちが里親制度を知り、さらには里親に馴染みをもつことの重要性を感じた。特別養子された方は、自身の境遇の異質性にとりわけ敏感に反応する学童期に、自身の境遇を標的にされ、かなりきついことばを投げかけられた。一方で、境遇に特別に配慮されるのも嫌気をさしたということも語られた。気を遣われるのは嫌、普通に接してほしい、でも自分の状況を理解し見てほしいとも語られ、こうした境遇の子どもへの対応のあり方について考えさせられる。
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