本研究課題の実施最終年度にあたる2020年度は、前年度までに行った学会・研究会等での研究報告を通じて得られたフィードバックをもとに、関連する文献等の収集・講読を継続するとともに、中高年期の家族介護と就業・健康の短期的及び長期的関連を検討するための分析モデルにもとづく統計解析を進め、研究成果を、国内外の研究報告や学術雑誌の掲載論文という形で公表することを中心に実施した。 具体的には、中高年女性における介護と就業の短期的・長期的関連についての分析にもとづく成果の一部を、「Parental Caregiving and Employment among Midlife Women in Japan」と題する論文として、国際的学術誌『Research on Aging』に掲載することができた。この主な結果は、日本の中高年就業女性において、軽度の介護を行うことは必ずしも離職につながってはいないものの、一定以上の介護を行うことが離職につながっている可能性や、就業状況によっては、軽度の介護であっても長期化すると離職につながる可能性があることを示唆するものであった。 今年度はこのほか、介護と就業・健康の短期的・長期的な相互関連についての分析にもとづく成果の一部を、日本社会福祉学会の学会大会で報告する機会も得た。さらに、前年度に予備的分析を行った、就業男女の介護によるワーク・ファミリー・コンフリクトやそのアウトカムとしてのウェルビーングに着目した分析についても関連文献等をさらに収集して分析を進め、成果の一部をAsian Conference on the Social Sciences等の国内外の会議で報告する機会を得た。
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