研究課題/領域番号 |
17K04260
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
原田 晃樹 立教大学, コミュニティ福祉学部, 教授 (20340416)
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研究分担者 |
松井 真理子 四日市大学, 総合政策学部, 教授 (30340409)
藤井 敦史 立教大学, コミュニティ福祉学部, 教授 (60292190)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 評価 / 自治体 / 社会的価値 / パートナーシップ / 第一線職員 / インフラストラクチャー / 公契約 / 委託 |
研究実績の概要 |
これまでに行った主な調査は以下の通りである。 第一に、公契約をめぐる評価のあり方については、日英自治体の公共調達・契約における社会的価値評価の取組と日本の休眠預金助成における社会的価値評価の実態について、当該団体とその分野に精通している研究者へのインタビュー調査を行って比較した。日本では、社会的価値の評価については量的な測定手法の開発に関心が向きがちなのに対し、英国では市民の幅広い合意を反映した政治的な事項と捉えられていることがわかった。また、公共調達では、日本の場合、発注者の力が圧倒的なのに対し、欧州では、労務賃金の基準は職種や熟練度などに応じて労使協定や個別法令によって具体的に決められていることが多く、いわば、民主導で価格が決められていることがわかった。このことは、単に測定の精度をたかめるだけでは社会的価値は増進されないことを端的に物語っているといえるだろう。 第二に、公共調達・契約に社会的価値評価が重視される背景には、グローバル資本主義の潮流に対して一定の歯止めをかけるねらいがあり、そのために、地域において連帯と参加の基盤整備が重要なテーマとなっていることがわかった。実際、協同組合やチャリティが移民や貧困者を支える力強い基盤になっており、彼らの代弁機能も果たしていた。日本では、主に農山村地域のコミュニティ組織や非営利組織に対して精力的にインタビューを行い、同様の機能が発揮されていることを確認した。 第三に、サード・セクターのインフラストラクチャー機能が、格差社会やコロナ禍における困難な時代において、重要なセーフティネットとして機能していることが分かった。この点については、残念ながら英国での調査はコロナ禍の影響でできなかったが、国内においては、農山村地域の地域運営組織や社会福祉協議会の取り組みを通じて確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウィルス感染の影響で英国調査ができなかったが、前年度までに毎年調査を行っていたので、文献等で補完することができた。また、その分、国内調査に専念することができた。
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今後の研究の推進方策 |
本調査研究を助成していただいたことで、公共調達・契約において価格以外の価値を評価するアプローチが日英で異なっている実態を具体的に学ぶことができた。この知見を生かし、今後は日本の休眠預金助成における評価のあり方や、いわゆる公契約条例における労働条項以外の社会的価値の反映のあり方などに具体的な提言ができるようにしたい。また、自治体の現場を預かる職員とサービス提供団体職員との相互作用のあり方が具体の施策にどのような影響を及ぼしうるかといったことについて、調査研究していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
英国への調査研究を計画していたが、新型コロナウィルス感染のため断念した。令和3年度に渡英し、追加調査したいと考えているが、難しいと判断された時点で、国内の追加旅費、研究図書費、OA機器購入等に充てたい。
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