研究課題/領域番号 |
17K04262
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
岩崎 香 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (20365563)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 障害者 / 権利擁護 / 差別意識 / ソーシャルワーク |
研究実績の概要 |
今年度の研究においては差別解消法の施行後、日本においてどのような差別や合理的配慮の提供が実施されているのかを把握することであった。障害者差別解消法における障害の範囲は、身体障害者はもちろん、知的障害、精神障害、発達障害、高次脳機能障害、難病等に起因する障害などを含み、非常に多様になっている。特に、知的、精神、発達、身体障害に含まれる内部障害、難病の方など、外形的にはわからない障害者への対応が求められる点で、何が差別であり、どういう合理的配慮を提供するのかという点で、サービスを提供する側が困惑する事態になっている。 そこで、障害者差別解消支援地域協議会体制整備事業により、都道府県、市町村に協議会が設置され、挙がってくる事例に対応がなされているが、同時にそうした事例を集積して対応を検討する材料として公表している。そうした事例から現状の分析を行った。 その結果、差別及び合理的配慮の不提供事例は、大きく、人的資源で対応可能な内容と物的環境整備が必要なものに大別される。本研究では特に外形上、障害の有無が判断しにくい障害者を対象としていることから、主に人的資源での対応が求められる事例を中心に検討を実施した。 結果、障害者差別解消法の対象となるサービスにおける差別、合理的配慮の不提供については、障害特性に関する正確な知識があることが求められると同時に、接遇、多様な障害に対応するための選択できるツールが用意されていることが解消につながることが明らかとなった。ただ、そうした配慮が差別をしたと言われないための対応ではなく、障害のある人とない人の平等や、多様性を許容する社会モデル的観点の浸透により、あたり前のこととして実行される仕組みづくりが求められている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度に障害当事者を対象とする調査を実施し、今年度はサービス提供事業者を対象とするアンケートを実施する予定であったが、初年度にアメリカにおける差別禁止法に関する調査を実施したために、平成30年度に障害者差別及び合理的配慮の不提供事例の分析を実施した。並行して、障害者とサービス提供事業者に関する差別及び合理的配慮の不提供に関して調査を実施で切ればよかったのだが、以前から採択されていた厚生労働科学研究費障害者政策総合研究事業における研究代表者としての研究以外に、平成30年度障害者総合福祉推進事業における検討委員会委員長を突然引き受けざるを得なくなった関係で、サービス提供事業者を対象とした調査を実施することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
令和元年は、サービス提供者に対する差別、合理的配慮の不提供、合理的配慮の提供に関するアンケート調査を実施する。主に、教育、就労、福祉、医療、その他の領域でサービスを提供している人を対象とする。障害者に対する知識の有無、接した経験の有無などのほかに、サービスを提供して差別、合理的配慮の不提供だと認識されたり、合理的配慮を提供したことによって感謝されたり、逆に快い反応が返ってこなかった等の詳細な状況を事例として収集し、共通する状況と業種、対象による相違などを探る。 障害当事者への差別、合理的配慮の不提供事例の分析及びサービス提供者への調査結果から、障害者差別がどうして生まれてくるのかという要因を探り、差別・合理的配慮の不提供が生じるプロセスを把握するとともに、サービス提供者と障害当事者の間の一致点と認識のズレとその要因に関する検討を行う。 検討結果から、差別はいけないということを伝えるだけではなく、どうして差別が起こるのかという原因やプロセス(差別の構造)を理解できるよう模擬的な事例を提示できればと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度に障害当事者を対象とする調査を実施し、今年度はサービス提供事業者を対象とするアンケートを実施する予定であったが、初年度にアメリカにおける差別禁止法に関する調査を実施したために、平成30年度に障害者差別及び合理的配慮の不提供事例の分析を実施した。並行して、障害者とサービス提供事業者に関する差別及び合理的配慮の不提供に関して調査を実施で切ればよかったのだが、以前から採択されていた厚生労働科学研究費障害者政策総合研究事業における研究代表者としての研究以外に、平成30年度障害者総合福祉推進事業における検討委員会委員長を突然引き受けざるを得なくなった関係で、サービス提供事業者を対象とした調査を実施することができなかったため、次年度使用額が発生した。 最終年度である令和元年に昨年度積み残したアンケートを実施する予定である。
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