文献研究においては日本における障害者差別がどういう社会構造の中で引き起こされてきたのかを検討するとともに、合理的配慮への理解を中心に障害者差別解消法の設立過程を追った。少子高齢化や経済の低成長は日本独自の福祉社会の形成を余儀なくしており、障害者の権利条約の批准という国際的な課題への対応もあいまって、障害者差別解消法が成立したが、法に含まれる重要なキーワードが「合理的配慮」である。法では、差別の禁止と合理的配慮の不提供の禁止(民間事業者は努力義務)を定めており、自治体や事業者はその対応を求められたのである。しかし、障害者差別解消法は、地域住民個人には何の拘束力もなく、結果として周知も進んでいない。差別禁止に関しては、障害のあるアメリカ人に関する法律(ADA法)が先んじていることから、ボストン、ニューヨークにおいて障害者の置かれている状況を調査したが、あらゆる機能障害への対応が示された点やADA法が国民に広く周知されている点などが日本と大きく異なっていた。 障害者差別解消法施行後、障害者差別解消支援地域協議会体制整備事業によって、都道府県、市町村に協議会が設置され、挙がってくる事例に対応がなされている。同時にそうした事例を集積して対応を検討する材料として公表しており、事例分析から、差別及び合理的配慮の不提供事例は、大きく、人的資源で対応可能な内容と物的環境整備が必要なものに大別された。その現状をさらに詳細に分析するために障害当事者やサービスを提供している事業者を対象とした調査を予定していたが、コロナウイルスの影響により、想定していた調査が困難な状況となったため、調査研究の方法、内容を変更し、障害者差別に関する日本の20歳代の若者4000人を対象としたオンライン調査を実施した。
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