研究課題/領域番号 |
17K04269
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研究機関 | 帝京科学大学 |
研究代表者 |
山田 健司 (山田健) 帝京科学大学, 医療科学部, 教授 (00320664)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 外国人労働者 / 家事介護労働 / 技能実習制度 / 特定技能 / 多文化共生 / 日本語教育 / 移民政策 |
研究実績の概要 |
外国人家事介護労働者が日本で稼働する事前期間の送出し国および受入れ国(日本)でも教育研修およびモニタリング調査をベトナムとフィリピンで合計6回、日本において4回実施した。そのうち2回が外国人教員4名が日本で研修した。送出し国においては、当該国において日本研修修了教員による学生教育教員の研修を継続的に実施している。その教育効果に関するモニタリング調査を合計6回実施している。 日本研修外国人教員4名は、全員が技能実習生としての来日経験者であり、3年間の在日期間を経て日本語教員として就労していた。全員がJLPT日本語能力試験N4を所持していた。フィリピン教員2名は当該国看護師資格を有していた。おおむね1ヶ月間の介護現場(特別養護老人ホーム、身体障害者療護施設、デイサービスセンター等)で実施。研修期間の日誌を解析。この内容をフィードバックして今年度において、研修教員による教員研修を受講した送出し国教員による教育内容と教育効果をモニタリングしてきた。 送出し国内におけるモニタリング対象教員は、5名。対象学生数は、約150名。モニタリング段階は3段階に設定している。現在は2段階目。現時点では、当該国での教育効果を従属変数に設定し、研修教員の属性、現地教員の属性、学生の属性等を独立変数として解析を進める準備段階に入っている。3段階目のモニタリング調査項目の設定のための研究を進めている。 なお、介護労働種就職希望学生はJLPTでN4の取得が来日条件となり、その後1年間でN3の取得を要していたが、現在はこれを除外したため、送出し国教育システムに変更が生じており、その影響についても調査中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究期間中に技能実習制度の大幅な見直しおよび特定技能制度の立法化がなされた。この両制度の対象となる外国人は、実習生と労働者としてそれぞれの法規に規定されているが、実質実際的には、熟練・非熟練労働者として日本の労働力不足への充足という全く同一の合目的的性を有しており、対象像も相当程度に重複している。法制度および運用上では、両制度間の相違は、研修と労働との差異があるため、根拠法をはじめ運用面はもとより日本社会への受け入れ施策等の面においても、根本的な部分において相違している。現在は介護労働種(技能研修)については、技能実習は凍結状態にあり、こんご一気に特定技能の方へシフトすることが予想される。したがって、送出し国内における事前教育、受入れ国内における事後教育は、制度間相違によって大きく異なることから、本研究内容にも相当な影響が出ている。2制度間の目的相違点と実態、特定技能労働者に対する教育内容の特定などを至急勘案し、研究調査プロセスを修正中である。 くわえて特定技能認定による労働者の受け入れは、特定技能2号への移行により、実質的な移民政策と同義であるため、生活者としての支援、という側面が必須要因として浮上してくる点も欠かすことができない。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度においては、モニタリング3段階目を実施する予定である。また、日本国内において、シンポジュームを送出し国関係者を招いて実施する。 特定技能労働については、技能実習制度との制度間相違点を整理して、可能な限りにおいて要する教育システムに関して調査を行う予定である。2制度の設計内容が異なっていたとしても、要する教育内容については、制度間相違を差し引いてもなお重要かつ示唆的な調査結果が得られるものと考えている。 さらに29年度30年度のモニタリングをとおして共通事項として教員教育および学生(研修者・労働者)教育の両面において課題となる因子が明らかになってきている。その最たる因子のひとつは、社会福祉施設という存在とくに高齢者を対象として介護保険施設の存在と運営内容そのものに対する疑問と問いかけである。日本以外の国においてこの種の生活収容施設は基本的に存在しておらず、さらには優生政策的福祉サービスの側面が色濃く反映されていることへの違和感や抵抗感として表出している。技能実習と特定技能の両制度の研修・労働場所は、第1種社会福祉施設に限定されていることもグローバル化や日本の高齢化と労働者不足の実態に逆行している。 これらのことを踏まえ、在宅福祉サービス、介護労働と家事介護労働との親和性、日本の近未来展望にも焦点を当てて総括的研究を展開していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究申請当初、技能実習制度のみが、介護職種の外国人労働者受け入れ制度であり、なおかつN4の日本語能力を入国時に要し、さらに入国後1年以内にN3程度の能力を有することを条件としていた。また、一定程度の介護技術の取得も研修要件として加えられいるため、これに関わる教育システムについて初年度より計画に沿って研究を進めていた。しかしながら、特定技能による介護職受け入れ制度が急遽開始されたため、送出し国機関のほぼ全部が技能実習から特定技能にシフトし、これにかかわり要する教育システムの内容が変更になったため、当初の教員研修も日本国内での研修をようしなくなったため。 30年度当該助成金は、31年度に日本で実施するシンポジュームにおいて使用する計画であり、31年度予算は特定技能にスイッチして引き続きどのような教育システムが技能実習と合わせて必要となるのか、着実に研究を進展させる予定です。
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