研究課題/領域番号 |
17K04270
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研究機関 | 中部学院大学 |
研究代表者 |
平野 華織 中部学院大学, 教育学部, 准教授 (60454302)
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研究分担者 |
浅野 俊和 中部学院大学, 教育学部, 教授 (00300351)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 伊勢湾台風 / 女性生活史 / 保育運動 |
研究実績の概要 |
本研究は、伊勢湾台風(1959(昭和34)年9月26日)の被災後、名古屋市南区弥次衛町の仮設住宅に臨時施設として敷設されたヤジエセツルメント保育所の各種実践を取りあげ、高度経済成長初期段階の社会・地域・家族の構造的変動や被災による生活基盤の破壊など、その実践の深層に位置づいていた生活世界の生々しいドラマへと切り込む社会史的叙述を試みるものである。こうした本研究の特色は、名古屋保育問題研究会の関係者の手でまとめられた資史料の枠内で実態把握されてきた先行研究をあえて批判的にとらえ、女性生活史及び地域社会史の立場から新知見の提示を企てる点にある。 そのため、今年度は、名古屋市女性会館等へ出向き関係する文献等の調査・収集を精力的に行い、伊勢湾台風被災者支援活動の全体像、ヤジエセツルメント保育所による各種実践の輪郭を把握した。さらに、伊勢湾台風発生当時の災害記録、行政資料、新聞雑誌記事の閲覧・複写を行った。 また、「坂ちか子の歩み」刊行委員会編『ひたむきに生きて-坂ちか子の歩み』を主要な分析史料として取り上げ、「いずみの会」会員でヤジエセツルメント保育所実践にも関わり、その後地域の保育所づくり運動を展開していく坂ちか子の生活史を分析した。「いずみの会」に集った女性たちによる「伊勢湾台風救援活動」を辿ることを通して、女性団体の視点から保育所づくり運動の歴史的意味を明らかにすることができた。その研究成果の中間報告の公表も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は、戦後の保育運動と女性運動の成立と変容の過程を検討するため、『行動する女たちの会』『新女性』『戦後保育史』等に掲載された関連記事を網羅的に収集し、検討を行うことができた。しかし、ヤジエセツルメント保育所の開設・運営に関わった保母や学生セツラー、東京・名古屋保育問題研究会会員、いずみの会会員ら、特に女性当事者へのインタビュー調査が遅れ気味である。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度以降(2年目及び3年目)は、前年度の作業を継続するとともに、それまでの成果を踏まえ、名古屋市南部の被災地域周辺に関する資史料の調査・収集を行った上、民衆生活を記録した文書や物質文化、存命者の記憶などの内容について分析を試みる。また、その研究成果の報告も行う。
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