研究計画の5年目である昨年度は、平成29年に実施した3つの社会福祉法人の地域密着型サービス事業所(3事業所及び事業部)における管理者、リーダークラス職員、一般介護職員(計25名)に対する法人や事業所における経営理念に対する認識に関するインタビュー調査結果を論文にまとめ投稿し、関西社会福祉学研究(日本社会福祉学会関西ブロック)第8号(2022)に掲載される。この論文では、いずれの職位の職員も理念の文言を理解した上で共感し、経営理念を反映した取り組みや利用者支援を理解し、実践していることから、本調査対象施設の理念の制度化と職員の理念の内面化は進んでいると考えられること、さらに、理念浸透の促進要因として、理念を体現し、尊敬できる上司の存在、一般介護職員に対する理念浸透の阻害要因は、理念について議論する機会や、地域住民と関わる理念を反映した取り組みに参加する機会が乏しいことを指摘した。 また、平成30年に実施した2つの社会福祉法人の介護老人福祉施設における管理者、リーダークラス職員、一般介護職員(計14名)に対する法人及び施設における経営理念に対する認識に関するインタビュー調査結果を論文にまとめ、人間健康学研究(関西大学人間健康学部)第15号(2022)に掲載される。この論文では、介護老人福祉施設では、施設自体が利用者の共同生活の場であり、地域との関わりが希薄であることや、家族や地域の理解が不十分であるなどの課題があり、理念の実現が困難であること、職員個人として利用者支援に対する理念は実践されているが、施設としての実践に対する認識が乏しいこと等を指摘した。 さらに、11月に関西2府2県の小規模多機能型居宅介護事業所(開設から5年以上)401施設の職員(管理者、リーダークラス職員、一般介護職員)を対象に、経営理念浸透に関する質問紙調査を実施した。
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