研究課題/領域番号 |
17K04276
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研究機関 | 人間環境大学 |
研究代表者 |
岡 多枝子 人間環境大学, 松山看護学部, 教授 (30513577)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 高大連携による福祉教育 / アクティブラーニング / レリバンスの解明 / プログラム開発 / 主体的・対話的学修 / 当事者参画型実証研究 / ライブ・ルーブリック評価 / 持続可能型反転授業 |
研究実績の概要 |
「福祉教育におけるアクティブラーニングのプログラム開発とレリバンスの解明」に関する実証研究の2年目となる平成30年度の主たる研究成果は以下の2点に集約される。 第1に、「福祉系高校教員への質問紙調査」の結果を踏まえて、全国福祉高等学校長会との連携のもとで「高大接続福祉教育に関する当事者研究」を行った。その結果、福祉系高校生は現場実習を含む「福祉をアクティブに学び」、介護福祉士国家資格を得て社会福祉士や看護師、教職等の進学を志向する「キャリアラダー」が浮上して、入学目的と学習内容、進路の「適合性(レリバンス)」が見いだされた。一方、介護福祉士養成高校は3年間で53単位の「専門科目履修の義務化」で普通教科が限られる為、大学入学後に「学力不足を痛感」する者もおり、高大接続福祉教育の「レリバンスを高める」必要性が明らかになった。 第2に、看護師・保健師学生へのアクティブラーニングを導入した社会福祉学教育において、学生の変容可能性と有効な福祉教育に関する実証研究の結果、学生は「説明と同意によるシラバスの共有」や「主体的に編成したグループで対話的学修」を経験することで「学びの当事者」のステージに立っていた。さらに、「学内外のアクティブラーニング活動」や「KJ法で学修成果を吟味」「調査研究・発信・討論による学びの深化・共有」「学生参加による評価」等で「当事者に思いを広げる」省察がみられた。これらアクティブラーニングによる福祉教育を通して、学生は学びの「客体から学びあう主体に変容」し、病や生活課題を抱える多様なクライアントを「自らに当事者化」するなど、当事者性を高めることに貢献するとの示唆を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「福祉教育におけるアクティブラーニングのプログラム開発とレリバンスの解明」に関する実証研究の2年目となる平成30年度末現在の進捗状況は、概ね順調に進展している。その理由は以下の通りである。 第1に、当初の研究計画の柱である①「福祉系高校教員への質問紙調査」及び、②「福祉系大学生を対象とした集団面接調査」は全国福祉高等学校長会との連携のもと福祉系高校教員数名に研究協力者として参加をいただきながら予定通り調査を行い、現在その分析を進めている。研究成果の一部は既に研究会や学会に於いて発表するとともに、福祉教育現場の実践や教職科目「福祉科教育法」のカリキュラム・教育実践にも反映させている。 第2に、「アクティブラーニングを用いた福祉教育に関する実証研究」も順調に進展しており、高校福祉科教員養成の教職科目「福祉科教育法」「教職実践演習」等を対象に、連携研究者(福祉系大学教授)との実証研究を進めている。研究成果の一部は、研究会や学会に於いて発表するとともに、継続した研究及び論文作成の途上にある。 第3に、上記の学会発表を通して、新たに「福祉系高校卒業生を対象とした集団面接調査」の研究課題が浮上し、現在、企画・準備を行っており、今夏に実施する予定となっている。 第4に、看護教育現場においてアクティブラーニングを用いた福祉教育に関する有効な教育方法の検討を試みた。実証研究の結果、学生の当事者性の獲得に貢献するとの知見を得て、研究会や学会に於いて発表するとともに、継続した実証研究と論文作成中である。
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今後の研究の推進方策 |
「福祉教育におけるアクティブラーニングのプログラム開発とレリバンスの解明」に関する実証研究の3年目となる令和元年度の研究の推進方策は以下の3点に集約される。 第1に、①「福祉系高校教員への質問紙調査」及び、②「福祉系大学生を対象とした集団面接調査」の結果分析と、③「福祉系高校卒業生を対象とした集団面接調査」の実施・結果のまとめである。分析は量的分析と質的研究のトライアンギュレーションによって福祉教育のレリバンスの解明を行うことである。 第2に、福祉系高校の「専門科目履修の義務化」で普通教科が限られる結果、大学進学者の「学力不足問題」が浮上した課題に対して、①高校で専門性と一般教養の担保に向けた「チーム学校」による全校ぐるみの教育方法の工夫、②横断的カリキュラム編成による科目の枠を超えたシラバスの創出、③高大連携、高大接続教育に高校生と大学生が当事者参画を行うことによる「エンパワーメント」の教育実践の試みを行う。 第3に、「アクティブラーニングを用いた福祉系大学生・看護系大学生に対する指導法に関する研究」では、「学びあう当事者」としての学生の変容を助ける教育方法として、「ジグソー教育法」や「持続可能な反転授業」、「ライブ型ルーブリック評価」、「当事者参画型実証研究」などの試みの継続と検討、システム化を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の最終年度に必要な調査・研究・総括を行う。
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