研究課題/領域番号 |
17K04279
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研究機関 | 佛教大学 |
研究代表者 |
朴 光駿 佛教大学, 社会福祉学部, 教授 (30351307)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 東アジア家族主義 / ケアギヴァー / ケアと仕事の両立 / 比較研究 |
研究実績の概要 |
東アジアの高齢者ケア問題の比較研究を通して、次のような2つの領域に関わる問題提起を行い、介護に関する哲学的論議をまとめた:①家族ケアと職場生活の両立を可能にする条件は何かを、中国の中小都市の介護状況に基づいて問題提起すること、②比較研究方法の側面としての問題提起であり、家族ケアではなく施設ケアを選択したケース、再婚家族のケア問題を探求することによって家族主義の概念をより鮮明にすることができるということである。 中国のケア状況については、介護と仕事の両立を可能にする条件は何かについて、中国中小都市の5つの家族ケア事例の分析に基づいて問題提起をした。次年度の本格的調査のための予備的調査活動である。韓国については、東アジア家族主義の概念を明確にするために、再婚・重婚などの家族関係と家族ケアとの関係性を施設入所者5名の調査に基づいて分析した。 この研究は第13回国際社会保障フォーラム(中国・南京大学、2017.9.16~17)で報告された。 また、ケアを受ける人とケアギヴァーが共生する共同体とはどのような特徴の組織なのかという観点から「共同体の哲学:相互義務システムとしての共同体」という論文をまとめた。共同体とは次のように概念定義された:①人間関係や人格的親密さ、あるいは道徳的倫理的信念に基づいて形成された組織体である、②そのメンバーの間では、他者の生活と生命への強い関心と配慮がなされ、必要に応じて相互扶助的連帯と実践が日常的に行われる組織体、③血縁・地縁を超えてこうした組織に賛同する見知らぬ人がそのメンバーとして加わるほどよりよい社会になるといった共通意識がメンバーの間に共有されている組織。 この論文は、第1回東アジアにおけるケアと共生国際学術会議(中国社会科学院、2017.8.16)にて報告された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究は計画通りに順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度の研究は、1990年代以降の高齢者ケア・ケアギヴァーの状況の変化を明らかにすることである。①ケアの市場化政策が導入される前の段階で、日中韓のケア・ケアギヴァーの状況を考察し、その時点で三国の脱商品化の水準にどのような格差があったのかを明らかにすること、②2016年8月に、応募者が行った中国黒竜江省地域の高齢者ケア施設を対象とした予備調査によると、ケア・ケアギヴァーの地域間格差はその深刻さを増していると判断される。介護施設に対する公共部門の整備がスタートする前の段階で市場化政策が行われたことにその原因があるが、そのような点を東アジア比較の観点から明確に示すことである。 研究中間報告として、第14回社会保障国際フォーラム(2018年9月15~16日、中国、大連財政大学)で報告する予定である。 また、平成31年度の場合は、高齢者ケア・ケアギヴァー領域に対する市場化政策の影響を明らかにすることを目標として設定している。低い水準の福祉発展段階での市場化は、直ちにケアギヴァーの社会的排除に繋がるということを明らかにし、しかし、ある程度ケアの社会化が達成された国においても、程度の差はあるにしても、社会的に排除されつつある存在になっていることを明確に示す。
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次年度使用額が生じた理由 |
2017年度には2回の国際会議での報告があり、2017年度の研究経費より約8万円ほど多く支出している。2018年度の研究経費が約8万円減ることになるが、研究目標達成には支障がないと思われる。
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