本研究は、ケアとケアギヴァーをワンセットとして捉え、東アジアの高齢者ケア問題の実態を明らかにすることを研究目的としていた。現地調査、専門家および高齢者介護事業者への聞き取りなどを行い、2020年1月8日~12日の中国現地調査と中国研究協力者との打ち合わせを終え、研究計画の中で残っていたのは「韓国研究協力者との打ち合わせと研究結果報告について最終的に協議すること」だけであった。それは2020年2月までには実施すると予定されていたが、2020年1月からはコロナの影響で国際往来ができなくなり、研究計画を1年延長することになった。 2020年度に入っても海外出張が不可能になったため、韓国研究協力者とはZoomなどを利用し、3年間の研究成果を検討し、主に研究結果を研究書として公刊するための協議を行うことで、研究を計画通りに実施することができた。とくに、東アジア家族主義の中でも、今まで先行研究はむろん学術的指摘もなされていなかった1つの重要な問題を確認できたのは重要な成果であった。それは、いわゆる「妾」であった高齢女性の高齢者福祉施設入所の実態についてである。軽度の要介護者のための介護福祉施設に入所する女性高齢者の中には「妾」身分だった高齢者が高い割合を占めていることが確認できたのである。それによって、要介護高齢者の介護施設入所には、要介護度の度合いだけでなく、過去の婚姻関係の形態も重要な要因になっていることが証明された。 2020年5月には研究結果として『朝鮮王朝の貧困政策』を公刊した。
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