1.最終年度として以下の2つの研究課題を実施した。 ①理論研究:福祉的支援を必要とする聴覚障害者への相談支援をおこなう専門職(=聴覚障害ソーシャルワーカー)が修得しておくべき知識やスキルについて、その内容および相談支援の基盤となるソーシャルワーク理論を概観した。その結果、聴覚障害者を社会の主流から排除しないためにも、ろう文化を理解し、聞こえるものが主流である聴者社会の中での立ち位置を理解したソーシャルワーク実践を行うには、文化モデルアプローチ、Culturally responsive social work の学びが必須であり、さらには Anti-Oppressive Social Work Practice を修得することにより、多様性かつマイノリティである聴覚障害者を有効かつ公平・公正に支援できることを理論的に考察した。 ②調査研究:新型コロナウィルス感染拡大により、長期にわたり延期となっていた聴覚障害ソーシャルワーカーを対象としたインタビュー調査に着手することができた。聴覚障害者へのより良い相談支援をおこなうには、ソーシャルワークの知識やスキルに加え、ろう文化やデフコミュニティの特性を理解した専門性が必要であることが明確となった。具体的には、狭いデフコミュニティ故に生じがちな個人情報漏洩防止策、少ない社会資源の効果的活用とともに多職種連携アプローチの活用、クライエントの手話言語レベルに応じた高い手話言語力などであった 2.研究期間全体を通じて 本研究課題は、聴覚障害ソーシャルワークの専門性を担保したソーシャルワーカーを養成するためのプログラムを開発・検証することであるが、新型コロナウィルス感染拡大により、調査が予定通り実施できず大きな後れが生じた。そのためプログラムの開発・検証には至らなかったが、今後も研究を継続していく予定にしている。
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