研究課題/領域番号 |
17K04283
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研究機関 | 大阪人間科学大学 |
研究代表者 |
山崎 康一郎 大阪人間科学大学, 人間科学部, 准教授 (30635868)
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研究分担者 |
水藤 昌彦 山口県立大学, 社会福祉学部, 教授 (40610407)
我藤 諭 龍谷大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (90808263)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 知的障害 / 性加害行為 |
研究実績の概要 |
研究全般にわたって、研究分担者2名、連携研究者1名、および、研究協力者である反社会的行動を伴う障がい者の支援研究会(しがASBサポートネット)と地域生活支援研究会の協力を得て遂行した。 知的障害者の性加害行為の要因、知的障害者を対象とした心理教育の方法、海外の先進的取り組みについての検討を行ってきた。あわせて、蓄積されたアンケート調査やインタビュー調査のデータを精査し、障害福祉サービスにおける支援上の課題や、性加害行為のあった知的障害者の地域生活支援におけるニーズについて分析した。これらから得られた成果は、日本司法福祉学会、日本社会福祉学会、日本福祉心理学会において発表するとともに、龍谷大学矯正・保護総合センター研究年報および司法福祉学研究に論文を投稿した。 また、国立重度知的障害者総合施設のぞみの園研修において、研究成果を用いて司法、福祉関係者への支援方法についての研修を行った。 本研究においては、知的障害という脆弱性のある人を研究対象者とすること、研究対象者の過去の非行・犯罪行為を扱うことがあり、慎重な倫理的配慮が求められる。研究分担者と知的障害者を調査対象者とした研究における倫理的な配慮された方法についての検討を行った。また、大阪人間科学大学および大阪大学医学部附属病院において倫理審査を受けて承認を受けた。 現在は、性加害行為のあった知的障害者への倫理的に配慮された安全なインタビュー調査を実施するために、過去に支援者および性加害行為のあった知的障害者に対して行ったインタビュー調査結果について調査対象者へのオプトアウトを行った上で再分析を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
性加害行為のあった知的障害者およびその支援者を調査対象者としているインタビュー調査を実施する予定である。調査目的は性加害行為の背景要因や動機、性加害行為から離脱する要因や離脱した地域生活を継続する過程を明らかにすることである。調査は現在および過去の社会関係や人間関係に焦点を当てて行うが、性加害行為に関わる内容が含まれる。そのため、過去の性犯罪・性加害行為をしていた時点の記憶や、過去の被虐待・被いじめ経験など被害体験の記憶が想起される可能性がある。その場合、調査対象者の陰性感情が賦活されうる。また、インタビューにおいて過去の犯罪行為に関する情報を得る可能性があり、調査対象者および調査対象者による過去の犯罪被害者のプライバシーへの配慮が必要である。 このように、慎重に倫理的な配慮を検討したうえで、安全に調査を行うことが必要であり、インタビュー調査による研究に先立って、安全に調査を実施するための方法を策定するための研究が必要となった。 この事前の研究においては、インタビュー調査を安全に実施するために、調査前後に行う研修内容を作成すること、知的障害に配慮したインタビューガイドを作成することを目的としている。方法は、過去に少人数で試行した性加害行為のあった知的障害者およびその支援者へのインタビュー調査結果についてオプトアウト手続きの後で再分析を行って、研修に必要な事項やインタビュー実施上の工夫を抽出するものである。
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今後の研究の推進方策 |
現在、インタビュー調査を安全に実施するための方法について検討を行っている。 2018年度はこの結果を基に、インタビュー調査前後の研修内容およびインタビュー方法を策定する。性加害行為を抑止するための環境調整の可能性や調査対象者の状態など安全性を研究協力者と検討した上で、調査対象者への協力依頼を行い、性加害行為のあった知的障害者および支援者へのインタビュー調査を実施する。 また、性加害行為のあった知的障害者への先進的な取り組みについて海外視察を研究分担者とともに実施する予定である。2名の研究分担者を中心に視察方法などを検討している。 インタビュー調査や研修を実施するための福祉事業所の支援体制を整える必要がある。また、インタビュー調査前後に行う研修は調査対象者への心理教育が含まれる。その内容は研究への協力同意や調査によって引き起こされたネガティブな感情への対処方法である。支援者に対しては、性加害行為の理解や介入方法、見守りや環境調整についての内容である。 2019年度は、インタビュー調査、調査前後の研修をさらに発展させて、調査対象者が所属する福祉事業所の協力を得て心理教育による支援を実施する計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究は2018年度も継続して実施しており、そこでは以下のような経費が必要である。 まず、インタビュー調査実施にかかる費用として物品費、旅費が必要である。調査データ分析においてはコンサルテーションにかかる謝金、分析の補助業務にかかる謝金が必要となる。また、研究会開催時の研究協力者の交通費や研究成果発表にかかる費用が必要である。加えて、海外視察のための旅費が必要となる。
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