研究課題/領域番号 |
17K04286
|
研究機関 | 神戸学院大学 |
研究代表者 |
西垣 千春 神戸学院大学, 総合リハビリテーション学部, 教授 (40218144)
|
研究分担者 |
田宮 遊子 神戸学院大学, 経済学部, 講師 (90411868)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 生活困窮 / 制度 / 民間福祉事業 / 支援 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、生活に困窮する人々の生活実態の変化を知り、社会保障制度、および民間の社会福祉事業の果たす役割について検証することにある。 平成29年度は、民間の福祉事業として実施されたプログラムによる生活困窮者への支援が、生活をどのように支えることにつながったかを把握するために、支援記録およびその後の電話によるフォローアップ確認が可能であったケースの現状について分析を行った。 その結果、①稼働世代では、年齢が高いほど現在の生活に満足するものの割合が低い ②支援時間短いもので現在の生活に満足するものの割合が高い ことがわかった。中高年多問題世帯で多様な支援を必要とするものが多く、生活改善が困難であると考えられた。また、若い世代では、早い関わりで生活改善の可能性が高いと考えられた。 一定の特徴は把握できたが、フォローが可能であったのは電話番号が記載されたケースの約半数であり、回答者と非回答者の特性を見ると、回答者には、男性で訪問回数が多く、支援総額が高い傾向がみられ、つながらなかったケースは、年齢が低めで、訪問回数が少なく、支援総額も低く、生活保護につながらないものが多い傾向がみられた。支援後自立につながったケースも多く含まれてれている可能性も示唆されていることから、調査方法の改善も必要であると判断された。次年度の研究においては正確なデータを得るために調査方法の改訂を行っていく必要性が認められた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画では、民間の福祉事業による経済的支援を受けた生活困窮者のその後の状況を把握することを予定していた。過去2年間に経済的支援を受けた1072人のうち、連絡先がわかるもの 694人全員にワーカーによる電話連絡が試みられた。電話調査結果から把握した現在の状況と支援期間に行ったケース記録を個人が特定されないよう情報の加工を行った状態でデータ化し、分析を行うことができた。しかしながら、フォローの方法には工夫が必要であることが示唆され、次年度に改善を試みる予定である。研究分析の進捗ついては、課題はあるものの概ね予定の内容を行えた。 得られた結果は現場で働くワーカーと共有する機会をもち、今後の情報収集への視点を深めていただく依頼を行った。質的分析に向けての事例抽出を行った。2年目の準備にも着手できているといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
2年目は、1年目の結果を踏まえ、経済的支援と生活改善の関連を検証する予定である。まず、量的調査の前提であるデータ情報の追加、改善を行う必要がある。初年度の電話調査では、約半数しか状況把握ができず、現状の正確な把握ができていない。効果を検証するには、現状を把握する方法を工夫し、データ数を増やす必要がある。 データの精度を高めたうえで、経済的支援がケースの特性によってどのような効果を及ぼすのかを再度検証する。効果を検証するためには、可能な限り、ケースのフォローを行うことと同時に、詳細を分析する質的調査が必要であるため、アプローチの方法を現場のワーカーと相談し、工夫を行う。量的分析の結果に基づき、新規のケースについて、ケース特性を判断し、面談実施を通じて、生活改善へのプラス要因、マイナス要因の質的分析を進める予定である。 年度末には、結果を還元できる研修会を実施する予定にしている。また、学会発表、論文投稿に向けての準備も進める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
初年度にデータ精度を高めるには至らず、分析が十分に深められなかったことがあり、予定していた情報収集に動くことができなかった。また、現場への結果還元はできたが、学会発表できるところまではまとめきれなかった。そのために当初予定していた研究費を執行できていない。今年度は夏に訪問調査を予定しており、研究結果の分析、まとめに際して協力体制を構築していく段取りを組んでいる。そのため、今年度は昨年度分と合わせ、物品費、人件費・謝金を中心に執行を計画的に進める。
|