研究課題/領域番号 |
17K04288
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研究機関 | 流通科学大学 |
研究代表者 |
加藤 曜子 流通科学大学, 人間社会学部, 教授 (90300269)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 15歳以上の支援 / 市町村 / 要保護児童対策地域協議会 / 問題行動 |
研究実績の概要 |
市町村における10代被害児の問題行動への支援実態と支援モデルの試みとして、2年目に10代被害児の実態を理解するために、全国市区を対象に調査を実施しました。 【目的】10代被害児、特に、15歳以上の青少年を対象にし、要保護児童対策地域協議会の進行管理台帳に登録されている子どもたちの実態を把握し、そこから課題を抽出する。 【方法】全国市区への郵送調査を実施した。対象は要保護児童対策地域協議会担当者であり、事例に関してはその担当者に回答を願った。調査項目は市町村の要対協活動状況、事例編については、虐待種別、重症度、家族構成、本児への面接頻度、在宅事例の根拠となる課題(選択)、在宅支援となった強み、支援内容、支援機関などである。 【結果と考察】当初の仮説は、要保護児童対策地域協議会に登録されている児童の面談があまりなされていないのではないか、長期にかかわる子どもの背景に家族の養育力の低さや経済問題などストレスのかかる生活背景があるのではないか、非行や自傷などの問題行動が多いことを挙げた。かかわる背景となっている問題行動の第一は不登校であり、ついでひきこもり、自傷・自殺企図が続いた。また予測どおり親の疾病、障害等による養育力の低さ、経済苦、孤立の割合が高かった。虐待種別はどれか主たるものを回答しているが、ネグレクトが6割を占めた。在宅支援となった「つよみ」は子どもの所属先が55%あり、支援する人を受け入れるが47%であった。支援にのりにくい回答は37%あり、市の子ども家庭相談者が面談している児童の頻度は、月1回は15.9%を占めたが、3割は会えていないという実態であった。長期に児童とかかわっている年数の最大は19年であったが、平均は4.6年であった。要保護児童対策地域協議会の調整機関(相談担当者)としては、支援にのりにくい被害児や家庭への支援課題があることがわかった。分析を継続させたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
調査から得られた実態調査結果については、さまざまな角度から分析が必要となるが、さらに調査を通じて理解したことは、長年要保護児童対策地域協議会登録事例としてかかわっていても、ある年齢から不登校に発展し、要保護児童対策地域協議会調整機関(子ども家庭相談担当者)と、被害児が面接を拒否することも多く、なかなか当該児童と出会えていない。よって被害児との面談ができている地域から、どういった工夫がなされているのかを聞き取りをする必要がでてきた。 聞き取り調査は30年度に実施した。残念ながら、当年度は重大事件が2件発生したことから、市町村においても、虐待事案調査が課せられるなどが重なり、大変忙しいために聞き取り調査を実施するのは困難となった。その中で5カ所から協力をいただき、聞き取ることができたが、さらにそこからどのような相談者姿勢が必要なのかを検討する必要がある。 15歳以上の問題行動にある被害児への支援の実態調査の際、第3の質問として、要保護児童対策地域協議会の登録児童は児童福祉法では、いったん終了となる扱いをするところであるが、継続した自立に向けた支援として、今後どのようになればいいかということについて問うた。回答結果、無回答が多く、特に困り感を挙げるところが多くはなかった。この背景には、そういった問題意識の低さや、日ごろから子ども若者支援推進法の設置についての連携した議論がなされていないのではないかと予測される。さらに子ども若者支援推進法との関係についても検討をしたい。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は最終年にあたる。15歳以上の被害児への支援実態調査を実施したうえで、さらに支援の在り方について検討を重ねる。6割を占めるネグレクト状態の被害児についての支援の在り方についても、質的調査として聞き取り調査を実施し、また、中学校、高校での連携状況や、地域におけるNPOによる取り組みなども含め、自立につないでいける取り組みや支援の在り方について現状把握に努める。要保護児童対策地域協議会から子ども若者支援推進法へとのようにかかわっていけるのか、先進地域の取り組みも検討をする。 また、要保護児童対策地域協議会登録児童においては、長年かかわっていながら、拒否的な親や子どもたちもいることから、面接方法、あるいは家族理解にむけた支援者の資質について検討をする。子ども家庭相談担当者に求められるコンピテンシーとはどのような要件が求められるのか、またどのような支援者としての支援アプローチが望ましいのかについて、すでに実践をしている手法などについて、聞き取り調査を通して理解を深める。 なお、従来から精通している地域の担当者も協力者に迎え、最終に向けた研究を推進させたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定をしていた聞き取り調査について、市区が多忙を極めていたことから、調査を延期することにしました。 よって、今年度中に、それらの市区への実態調査から得られた事例からみられる支援工夫などを含めて、調査すること、また15歳以上への学校やNPOを含めた支援状況も併せてヒヤリングを予定します。
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