障害のある子どもの家族の感情表出(EE)研究を進展させ、家族のアセスメントツールとして確立するため、近年の研究で用いられているFamily Questionnaire(FQ)尺度に着目し、その信頼性と妥当性の検証を試みた。FQは4件法でEEの構成要素である批判的な態度(CC)と感情の巻き込まれすぎ(EOI)の2つを評価する点に特徴がある。原著者の許可を得て、逆翻訳の手続きを行い、日本語版を完成させた後、再検査信頼性及びFMSSによるEE評価及び健康関連のQOLを評価するSF-12v2を用い妥当性を検証、さらにEEの高低を判断するカットオフポイントを算定するためROC解析を行った。研究協力者は、障害児通所支援児童精神科外来ならびに障害歯科を受診する子どもの保護者約63名であった。2021年度は新型コロナウィルスの影響で十分な成果発表ができず、結果分析を進めた。再検査信頼性はICCがFQ全体、CC、EOIそれぞれ0.70~0.80で望ましい値だった一方、FMSSとの相関は、CCでかなりの相関が得られたが、EOIについては相関係数が低かった。ROC解析では尺度としての妥当性を示すことができなかったが、SF-12v2との相関がみられ、保護者の健康を表す尺度としての可能性は示された。EOI評価に課題があった原因として、EOIを評価すること自体の難しさとそれに伴う日本語訳の問題があると考えた。EOIは社会文化的な影響をより受けると考えられておりこれまでもその評価が難しいといわれてきた。障害のある子どもの場合、親の自己犠牲や過保護行動を「献身的なケア役割を果たす母親」とみる規範がある。保護者の養育行動に関する尺度でも、「関与」と「見守り」は肯定と否定両方の意味を含んでいる。今後、保護者が置かれている社会的状況や期待される養育行動を考慮した日本語訳に修正し、妥当性の検証を試みる必要がある。
|