本研究は、地域における包括的ケアの実現に向け、ますますその必要性が高まる多職種協働を有効に促進するための画期的方法として「リフレクティング」を用いたプログラムの実践研究をおこなうことを目的とする。具体的には、ノルウェーの臨床家トム・アンデルセンによって提唱されて以来、世界各地で広く活用されているリフレクティング・プロセスについて、福祉・医療の現場をフィールドに長期的な参加型アクションリサーチを実施することで、その効果と禁忌を臨床福祉社会学の視座から明らかにするとともに、多職種協働のためのリフレクティング・プログラムを構築する。 今年度は、参加型アクションリサーチを通したリフレクティングの有効性の検証をおこなうため、熊本県内の医療法人との研究協力のもと、(1)一部職員を対象としたリフレクティング研修の継続とプログラムの改善、(2)全職員を対象とした職種間・部署間の連携実態調査、(3)全職員を対象とした個人と組織のウェルビーイングに関する継続的調査、(4)上記調査結果を踏まえた組織内の協働促進のため、医療法人内に「治療環境ケア部門」を設置し、協働促進のためにリフレクティング・トークを活用する専門チーム(院内協働促進室)を組んでのリフレクティング・プロセスの展開をおこなった。 なお、(2)(3)の結果については、当該プログラムの有効性を現場の職員から成る研究チームとともに検証、定期的な現場へのフィードバックを協働しておこなう等、参加型アクションリサーチの意義と効果に留意しつつ、研究を遂行している。 多職種協働のためのリフレクティングの理論研究も継続しており、その成果の一部は、国内の学会や専門誌において報告した。
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