研究課題/領域番号 |
17K04295
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研究機関 | 別府大学 |
研究代表者 |
林 真帆 別府大学, 文学部, 教授 (50523304)
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研究分担者 |
織原 保尚 別府大学, 文学部, 准教授 (50586823)
尾口 昌康 別府大学, 文学部, 講師 (10567225) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 判断能力の評価 / MCA2005 / チーム・ビルディング |
研究実績の概要 |
研究成果の一つは、医療機関へのアンケート調査による意思決定支援の現状と課題を明らかにした。大分県医療ソーシャルワーカー協会280名と大分県精神保健福祉協会120名へのアンケート調査を実施し、有効回収率は46.0%と40.0%であった。結果について特筆すべきは、判断能力有無についての判断根拠が病気・障害・精神状態の3点が優位を占めていたことである。つまり、能力を評価するのではなく、状況のみで判断している現状が明らかとなった。 二つには、イギリス現地調査(6か所)を実施し、MCA2005の現状と課題を明らかにした。それをもとに憲法第13条個人の尊重の観点から成年後見制度の検証をおこなった。イギリスMCA2005における永続的代理権付授与制度(Lasting Powers of Attorney)は自分に代わって決定を行うものを自分の意思で選任し決定権限を与えるものである。この決定権限には受診の有無、治療の同意・不同意に関して受任者が決定を下すことが可能であるが、本人の意向や感情を表明できるように受任者があらゆる支援を案件ごとに試みることが前提条件となっている。いわば、MCA2005は個人の尊重を最大限保障するものであり、行為能力という概念で自己決定を一律に奪う成年後見制度の見直しの妥当性を確認できた。 また、MCA2005を活用するうえでの3つの課題が明らかになった。①判断能力を見極めるためにはコミュニケーション・ツールの活用など多様なアプローチを必要とするがそのため業務量が増加すること、②ベスト・インタレストを導く際に関係者間でコンフリクトが生じること、③本人と家族の意見が異なる場合の介入の困難さである。特に②、③については関係者に共通した障害者観、価値認識の必要性が高くチームビルディング(協働的組織づくり)の必要性を明確化できた。なお、調査内容は報告書を作成している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
今年度、当初予定していた研究代表者並びに研究分担者のエフォートが確保できず研究全体が遅れている状況である。その理由は、研究代表者の学内業務増、研究分担者一名は健康上の理由から役割を遂行できなかったことによる。このことにより、アンケート調査分析が途中であり、加えて、意思決定支援の方法を析出するためのヒアリング調査に着手することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究を推進するうえで以下の方策をとる。 ①研究分担者を追加したことから、年間計画を見直し、役割分担を明確化する。 ②研究推進チーム(医療ソーシャルワーカー3名で構成)の協力のもと、ヒアリング調査を8月までに終了できるように取り組む。また、速やかにデータ分析を行うために音声データのテープ起こしを外注する。 ③円滑に研究を進めるため科研会議をスカイプを用いて実施する。 ④これまで共著として研究成果を一部公表してきたが、今年度は、分担テーマにそって公表できるように取り組む。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた職能団体を通じてアンケート調査できず、他団体に依頼した。・このことから、会員数の変動に伴い調査にかかる通信運搬費、謝金などが予定額より少なくなった。 2019年度は医療ソーシャルワーカーへのアンケート調査を実施することからその調査の謝金に充当する予定である。
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