研究課題/領域番号 |
17K04297
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研究機関 | 静岡県立大学短期大学部 |
研究代表者 |
加藤 恵美 静岡県立大学短期大学部, 短期大学部, 助教 (50381314)
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研究分担者 |
井上 孝代 明治学院大学, 国際平和研究所, 名誉教授 (30242225)
伊藤 武彦 和光大学, 現代人間学部, 教授 (60176344)
松平 千佳 静岡県立大学短期大学部, 短期大学部, 准教授 (70310901)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 保育士 / 子ども / 離婚 / 喪失体験 / あいまいな喪失 / トラウマケア |
研究実績の概要 |
災害・事故も多い今日、また病気・自殺などで親を喪失し、トラウマを抱える子どもも少なくない。離婚の増加に伴い、“あいまいな喪失”(Boss 1999)を体験する子ども(以下、喪失体験児)も増えている。しかし保育現場において、親との離別に伴う悲嘆やトラウマを抱える子どもの支援が重要にも関わらず、殆ど議論されてこなかった。 本研究は、(1)保育所保育士(以下保育士)への聞き取り調査及び質問紙調査によって喪失体験児の実態と支援の課題を明らかにし、(2)喪失体験児のトラウマに対するレジリエンスを高める支援法の開発を試みることを目的とした。 平成30年度は、保育士を対象に郵送質問紙調査を実施し、得られた約400名の回答について量的及び質的分析を行った。結果として、喪失体験児の多くは離婚による離別体験をし、死別のケースは少なかった。その後の心身・情緒・行動面の変化が見られた子どもには、スキンシップや感情の表出を促すなどの個別支援を行い、保護者の生活・情緒面の支援も行っていた。職員間及び会議での喪失体験児に関する情報共有もなされていた。しかし、対応の困難も感じており、特に離別体験やそのケアの専門知識が不十分なこと、家庭の状況への対応がわからないことを挙げていた。この要因の一つとして、「あいまいな喪失」といった喪失体験を捉える理論的枠組みが、保育実践に用いられていないことが推測された。そして、支援に必要なこととして挙げられていたのが、保護者への専門家によるカウンセリングや保育士を対象とした専門知識に関する研修であったこと、保育士が喪失体験児の支援を担うことや、支援能力の有無については積極的な回答が少なかったことについてさらに分析を行う必要がある。 以上から、今後は郵送質問紙調査結果の分析を進め、分析結果とホスピタル・プレイ及びグループ表現セラピーの知見を踏まえた支援法開発を引き続き行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成30年度は、保育士を対象に郵送による質問紙調査を実施するにあたり、①調査対象施設に対し、協力依頼と協力の承諾を得るために時間を要したこと、②回答を得られた質問紙における自由記述の内容量が膨大であり、さらに喪失体験児の事例が多数かつ複雑であったため、データの作成に時間を要したこと、③多変量解析及びテキストマイニングによる結果の分析も同じ理由から予想以上に時間がかかったことから、研究が計画通りに進まなかった点があった。平成31年度は計画に沿って研究を進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度(初年度)は、①保育士への面接調査と結果の分析、②ホスピタル・プレイの知見を用い、対人援助専門職を対象としたホスピタル・プレイのアクティブラーニング型研修会を行った。 平成30年度(2年次)は、保育士への郵送質問紙調査の実施と分析まで進めることができている。 そこで、平成31年度は、①質問紙調査結果の分析をさらに進め、②調査協力施設へその報告書を郵送するとともに、③支援法に用いるグループ表現セラピーの研修会の開催、④保育士を対象とした喪失体験児のトラウマ体験へのレジリエンスを高める「プレイ(遊び)」と「グループ表現セラピー」を用いた支援法開発の継続、⑤保育士を対象に喪失体験児のトラウマ体験へのレジリエンスを高める支援法のプログラム化及び試行を実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度に次年度使用額が生じた理由は、①研究を進めるにあたり、調査対象施設に対し郵送質問紙調査への協力依頼と協力の承諾を得るために時間を要したこと、②回答を得られた質問紙における自由記述の内容量が膨大であり、さらに喪失体験児の事例が多数かつ複雑であったため、データの作成に時間を要したこと、③多変量解析及びテキストマイニングによる結果の分析も同じ理由から予想以上に時間がかかったためである。以上の理由により、計画通りに進まなかった点があった。平成31年度は計画に沿って進める予定である。 平成31年度は、①質問紙調査結果の分析をさらに進め、②調査協力施設へその報告書を郵送するとともに、③支援法に用いるグループ表現セラピーの研修会の開催、④保育士を対象とした喪失体験児のトラウマ体験へのレジリエンスを高める「プレイ(遊び)」と「グループ表現セラピー」を用いた支援法開発の継続、⑤保育士を対象に喪失体験児のトラウマ体験へのレジリエンスを高める支援法のプログラム化及び試行を並行して進める予定である。 このため、①質問紙調査結果報告書の印刷費及び郵送費、②打ち合わせを行うための旅費、③研修会及び支援法プログラム施行のための旅費と人件費、④研究成果発表のための旅費、⑤支援法開発及び研修会のための材料購入費(消耗品)が必要となり、これらの支出を予定している。
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