研究課題/領域番号 |
17K04303
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研究機関 | 国立社会保障・人口問題研究所 |
研究代表者 |
山本 克也 国立社会保障・人口問題研究所, 社会保障基礎理論研究部, 部長 (30415822)
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研究分担者 |
石田 成則 関西大学, 政策創造学部, 教授 (50232301)
佐藤 格 国立社会保障・人口問題研究所, 社会保障基礎理論研究部, 第1室長 (50506409)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 団塊ジュニア / 老後生計費 / 世代重複モデル / 公的年金 / 企業年金 / 個人年金 / 生活保護 |
研究実績の概要 |
就職氷河期世代と重なる団塊ジュニア世代の家計の動向は、今後の社会保障給付費の動向を指し示すものである(現在、団塊ジュニア世代の最高齢は48歳)。団塊ジュニア世代を現役時代が①主として正規雇用(中・高所得者)グループと、②主として非正規雇用(低所得者)であったグループに分けた保険数理モデルを作成した(このモデル自体の成果は2018年10月に「年金と経済」掲載)。貯蓄も少ない団塊ジュニア世代は、生活保護の受給を前提として老後生活を送る蓋然性が高く、老後家計の維持方法を年金と生活保護の組み合わせという形態で構成した。 ただし、保険数理モデルでは若年期・中年期の働き方の変化(非正規→正規、正規→非正規)を捉えることが難しいので、マイクロシミュレーション分析を必要とするが、これのプロトタイプモデル(公表データを基に擬似的な個表データを作成して構築した)も30年始めに完成している。個票データを取得後、データの置き換えを行ってシミュレーション分析に入る(成果の一部は昨年10月の日本年金学会で報告し、その後、学会誌に論文を掲載した)。 一方、公的年金の負担を少しでも減らすためには富裕層の企業年金・個人年金市場の動向を分析し、企業年金・個人年金市場の拡大とこれらの優遇税制の経済波及効果の分析を行うことも必要なので、これが可能なマクロ計量モデルのプロトタイプモデルも既に完成している(経済全体の像を描き、経済ブロックの相互作用の測定、制度の実効可能性・持続可能性の検討にはマクロ計量モデルは適している)。 シミュレーションのシナリオとしては、2019年6月に開催されるOECDアジア・太平洋州年金専門家会議に参加できることになったので、従前の計画に加えて、東南アジア・東アジア、オセアニアといった地域の企業年金・個人年金の動向を研究者ベースでのヒアリング調査を追加で実施する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
保険数理を利用したモデルを先行させて問題点を洗い出し、次いでマイクロシミュレーションモデルを作成し、就業の遷移を捉えながら団塊ジュニア世代の老後生計費の検討に入るという方針で研究計画を立てた。計画では、各種制度改正案や施策案による効果がモデル上では実効可能かということを調べるためにマクロ計量モデルを作成することになっている。種々の研究会等での報告を通じても、この方針に対する疑義は少なく、また、研究実績に示したように、この方針に沿って研究は進められているのでおおむね順調であるとの自己評価をしている。ただし、実体経済とモデルの仮定の整合性を見るためのマクロモデルの開発が遅れていて、この成果は本年の後半になる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
基本的に研究計画に沿って進めていく。令和元年度は、これまで作成した基本モデルを基に、個票データから働き方の変化(非正規→正規、正規→非正規)を遷移確率にし,マイクロシミュレーションに投入して家計を構築させ,1)家計が医療・介護のリスクにあわなかった場合、2)家計が医療・介護のリスクにあってしまった場合、2)に加えて3)医療・介護保険料(率)、医療・介護自己負担率高額療養費制度・高額介護サービス費用制度が変化した場合の老後生計費等を試算する。こうした試算における制度改正案や施策案については、今年もKorea OECD Policy Center にてアジア太平洋州での企業年金・個人年金の動向に対するヒアリングが可能である。よって、制度改正パラメータや施策パラメータの設定は、研究の最終年度ギリギリまで詰めていきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
マクロモデルの作成が中途で、これに掛かるアルバイト費用の執行が遅れたため。これに関しては、本年の上半期に執行する予定である。
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