団塊ジュニア世代の老後生計費を、保険数理モデル、マイクロシミュレーションを利用し、ミクロの家計分析(正規・非正規別、単身、夫婦等の世帯類型別)とマクロの制度持続可能性判別分析を同時に実施した。団塊ジュニア世代の年金受給開始時期は2036年で、団塊世代の先頭が89歳になり、医療・介護費用が最も高いと予想される時期と重なる。公的年金給付から見れば、マクロ経済スライドが発動し続けている時期と重なり(2014年公的年金財政検証結果)、基礎年金の給付水準は現在の約7割程度になると予想されている。先進諸国の公的年金制度は、低所得者に重きを置くよう舵を切り始めている。こうした動きを政策変数とし、持続可能な年金制度改革案及び医療・介護制度改革案を模索した。研究結果をまとめると、次のようになる。 まず団塊ジュニア世代という近い将来の被用者年金受給者について、医療・介護費を考慮した老後生計費モデルを作成し、その年金受給開始後の家計収支を見た結果、試算した年金の受給を繰り下げられれば、65歳以上の“赤字”をある程度できることが明らかになった。なお、基礎年金のみを受給せざるを得ない国民年金の受給者の貧困リスクは高く、基礎年金の減額は生活保護を前提とした老後生計費設計というサインを国民一般に出すことになることが明らかになった。 またマイクロシミュレーションモデルにより、団塊ジュニア・ポスト団塊ジュニア世代が65歳以上の年齢になる2041年・2046年・2051年・2056年における年齢別の厚生年金受給額を見ると、平均的に見て、これらの世代の年金額は、若干ではあるが他の世代よりも低めであり、また給付水準を50万円ごとに区切り、その分布を見ると、男性については団塊ジュニア世代よりも前の世代と比較すると、年金額は低い方向に偏る傾向があることが明らかになった。生計費との比較を行うと、老後の基礎的消費のみをまかなうだけであれば、基礎年金でも可能であるが、基礎的消費を超える水準の消費を目指すのであれば、正規雇用者の平均的な賃金・年金に近い水準が必要であることが明らかになった。
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