研究課題/領域番号 |
17K04304
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研究機関 | 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所) |
研究代表者 |
島田 千穂 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究副部長 (30383110)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | エンドオブライフケア / アドバンスケアプランニング / 意思決定支援 |
研究実績の概要 |
認知症の診断を受けた高齢者の終末期ケアに対する希望を、長期的段階的に引き出す方法を探索することを目的として、カードゲーム方式のプログラム導入の可能性を検討した。地域住民から希望者を募り、64名(男性12名、女性52名;平均年齢74.0±4.8歳)を対象とした。3~5名を1グループとして、米国で開発されたGoWishの翻訳版もしバナカードを用いた対話を中心としたワークショップを行った。カードは人生の最期に大切にしたいこと(例:痛みがない、人との温かいつながりがある、信頼できる主治医がいる、など)が書かれた35枚で、取捨選択を繰り返すゲームを通じて、重要事項が明確になると考えられている。ワークショップ前後に調査票への回答を求めた。調査項目は、ワークショップの満足度、評価、基本属性と、認知機能低下を弁別するための基本チェックリスト3項目とし、3項目中1項目でも該当有の場合に認知機能低下疑い有とした。その結果、認知機能低下の疑いがある人は、ない人より満足度が低く、カードや対話といった言語的コミュニケーションを基盤にした将来を思考するプロセスへの参与が困難であった可能性が示唆された。 また、初期認知症の人の将来認識を探索するためのインタビュー調査も合わせて行った。認知症疾患医療センターに定期的に通院する18名を対象に、将来の望む生活について尋ねた。認知症であることやその困難さは語りの中に含まれず、過去の経験は肯定的に語られ、その延長線上で多くを望まず、継続する希望が語られた。認知機能低下の影響で、将来という時間的展望が持てない可能性や、将来が長くないという否定的側面を思考しないようにしている可能性が考えられた。 認知症の人を対象にしたアドバンスケアプランニングは、今現在に焦点化した問いを中心にして、その人にとっての快を探索する目的で実施することが有意義である可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究を進める過程で、言語的コミュニケーションに依存しない方法の開発が必要となり、計画を変更した。認知症高齢者と将来の希望を探索するために適したコミュニケーション方法を探索するために、インタビュー調査を行い、有意義なデータを得ることができた。来年度は、当初予定していたカードゲームから、タブレットによる映像を重視したツールに変更して探索的研究を行う。
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今後の研究の推進方策 |
今年度実施した研究結果から、認知症高齢者が将来を考える時の阻害要因が明らかとなった。その結果から、認知症高齢者の段階的事前準備には、言語に頼らないコミュニケーションを基本に、将来に向けた時間的展望を前提とせず、今現在の認知症高齢者を理解することによって、将来の代理決定者が終末期における治療選択の際に、本人の意思を推定するための情報を収集するという捉え方が必要である可能性が示唆された。 今年度は、当初予定していたカードゲームから、タブレットによる映像を重視したツールに変更し、認知症高齢者を理解することが意思決定支援となりうるかを探索する研究を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
介入研究の計画を変更したためである。 研究を進める過程で、言語的コミュニケーションに依存しない方法の開発が必要となった。認知症高齢者の将来の希望を探索するために適したコミュニケーション方法を探索するために、インタビュー調査を行い、将来的展望を前提としない、現在に焦点を当てた方法として、タブレットによる映像を重視したツールに変更して探索的研究を行うこととした。次年度に先送りして使用する。
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