研究課題
WHOは地域の「社会環境」の改善を促すために,「まち(city)」の社会環境と健康の格差の評価ツールとして,Age friendly Cities(AFC)を提唱してきた.厚生労働省「健康日本21(第2次)」でも,高齢者のwell-beingな暮らしに大きな影響を与える要因である健康に関して,社会環境の違いによって集団間に「格差」があることを指摘している.その格差を縮小するために「社会全体が相互に支え合いながら,国民の健康を守る環境を整備する」ことを目指している.本研究では,AFCの概念を構成する8領域(①野外空間・建築物,②交通,③住宅,④尊敬・社会的包摂,⑤市民参加・雇用,⑥社会参加,⑦地域・保健サービス,⑧コミュニケーション・情報)と高齢者の健康との関連性を明らかにすることを目的とした.2019年JAGES(日本老年学的評価研究)調査に回答した121市区町村(n=167,526人)を対象とし,各市町村の健康指標とAFC指標との関連性を検証した.その結果,全ての領域で健康関連指標との関連が見られた.図書館や公園の数,バリアフリーの歩道の有無,持ち家率,地域の人々に対する信頼感などの地域の住環境や,ボランティア活動への参加,若者との交流,対面およびインターネットを利用した人々とのつながりなどの社会参加やコミュニケーションに関わる環境,日常生活や健康のために必要な行政や民間のサービスへのアクセスなどが幸福感や要介護リスク指標と統計的に有意な関連性を示した(p<0.05).また,幸福感のある人の割合は多くのAFCの指標間と関連が見られ,AFCの枠組みは総合的な都市評価指標になりうることが示唆された.本研究は,千葉大学などの倫理審査委員会の承認を受けて行った.
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